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ドナルド・マクドナルド・ハウス:病気の子どもと家族を支える「第二のわが家」


概要
ドナルド・マクドナルド・ハウスは、自宅から遠く離れた病院に入院・通院している子どもとそのご家族のための滞在施設です[1]。コンセプトは「Home-away-from-home」、すなわち「わが家のようにくつろげる第二の家」として、病気の子どもに付き添うご家族が自宅にいるようにゆったり過ごせることを目指しています[1][2]
施設は公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパンによって運営され、1人1日1,000円という低料金で利用できるため、長期入院が必要な病児の家族を経済的な面からも支援しています[3][2]
世界での始まりと日本への展開
発祥の背景
この取り組みは1974年、アメリカのフィラデルフィアから始まりました[1][3]。きっかけは、アメリカンフットボール選手フレッド・ヒルの3歳の娘が白血病にかかり入院した際、狭い病室で子どものそばで寝ている母親や、食事もきちんととれない家族の姿を目の当たりにしたことでした[4]。病院が自宅から遠く離れていたため、精神的にも経済的にも苦痛を感じた彼は、病院の近くに家族が安らげる滞在施設の必要性を痛感しました[4]
マクドナルドの店舗オーナーや病院の医師、フットボールチームの仲間の協力を得て募金活動が進められ、フィラデルフィア新聞社が提供した家屋を改造して世界初の『ドナルド・マクドナルド・ハウス』が誕生しました[1]
世界への拡大と日本への導入
現在、世界45の国と地域に約380ヵ所のハウスが設けられています[3][5]。日本では2001年に東京・世田谷区に第1号ハウス(現:せたがやハウス)が開設され[3][2]、2024年12月時点で全国に12ヵ所のハウスが運営されています[6][5]
日本のドナルド・マクドナルド・ハウス一覧
日本全国には以下の12ヵ所のハウスが設置されています[1][5]

  • さっぽろハウス(北海道札幌市)- 北海道立子ども総合医療・療育センターに隣接
  • せんだいハウス(宮城県仙台市)- 宮城県立こども病院に隣接
  • とちぎハウス(栃木県下野市)- 自治医科大学附属病院に隣接
  • さいたまハウス(埼玉県さいたま市)- 埼玉県立小児医療センターに隣接
  • せたがやハウス(東京都世田谷区)- 国立成育医療研究センターに隣接
  • ふちゅうハウス(東京都府中市)- 榊原記念病院に隣接
  • 東大ハウス(東京都文京区)- 東京大学医学部附属病院に隣接
  • なごやハウス(愛知県名古屋市)- 名古屋大学医学部附属病院に隣接
  • にいがたハウス(新潟県新潟市)- 新潟大学医歯学総合病院に隣接
  • おおさか健都ハウス(大阪府吹田市)- 国立循環器病研究センターに隣接
  • 神戸ハウス(兵庫県神戸市)- 兵庫県立こども病院に隣接
  • ふくおかハウス(福岡県福岡市)- 福岡市立こども病院に隣接
施設の特徴と設備
ハウスには以下のような充実した設備が整っています[4]
  • 広くて使いやすいキッチン(自炊可能)
  • テレビ、ソファが置いてあるリビングルーム
  • 常温の食料等を入れるロッカー
  • 大きな冷蔵庫、冷凍庫
  • プレイルーム
  • 寄付から提供された食品類
  • シャンプーやボディソープ、歯ブラシなどの生活用品
  • リーズナブルに使える洗濯機と無償で使える乾燥機
  • たくさんの本や絵本、漫画が揃った図書室
  • プライバシーを守れるように配慮したベッドルーム
運営体制と支援システム
運営資金
ハウスの運営は100%寄付と募金によって支えられています[5][7]。主な支援源は以下の通りです[4]
  • マクドナルド店舗に設置された募金箱
  • インターネットでの募金
  • 東京マラソンなどのチャリティ枠からの寄付
  • 年に一度の「青いマックの日」(旧マックハッピーデー)
  • ハッピーセットの売り上げ1点につき1円の支援金[3][2]
ボランティア支援
全国に約2,000人ものボランティアが登録されており、清掃・受付・食事準備・交流会の企画など、さまざまな形で施設運営を支えています[5]。各ハウスには約100名のボランティアが参加し、日中の清掃や夜間宿直のナイトボランティアなどを行っています[4]
実際の利用事例
事例1:神経芽腫の治療で利用した家族
名古屋のハウスを利用した家族の体験談では、娘の神経芽腫治療のため約2ヶ月間利用しました[4]。この家族は「マクドナルドハウスは、病気の家族を笑顔にさせる場所でもあります」と述べ、充実した設備と温かいサポートに感謝の気持ちを表しています[4]
事例2:左心低形成症候群の治療で長期滞在
屋久島から福岡こども病院に転院した家族の事例では、生後2日目から娘の左心低形成症候群の治療のためふくおかハウスに滞在しました[8]。この母親は「知り合いもいない福岡での子どもの闘病生活が始まったばかりで、不安いっぱいの私たちに、ハウスで居合わせた先輩ママさんが声をかけてくれていろんなことを教えてくださいました」と語り、同じ境遇の家族との出会いが大きな支えになったことを強調しています[8]
事例3:北海道から東京への転院で利用
13歳で東京都立小児総合医療センターに入院した裕翔君とその家族の事例では、北海道から東京への転院に伴いふちゅうハウスを利用しました[9]。裕翔君は「治療の影響で食欲も元気もなかった私にとって、母が作るご飯がたべられる事は凄く嬉しく、次の治療に向けての気晴らしにもなりました」と振り返り、「辛い治療に耐えられたのも、ドナルド・マクドナルド・ハウス ふちゅうがあったからだと思っています」と感謝の気持ちを表しています[9]
事例4:生体肝移植手術のための滞在
宮城県から埼玉県立小児医療センターで生体肝移植手術を受けた心湊君の家族は、さいたまハウスを約1ヶ月間利用しました[7]。母親がドナーとなる手術で、夫がハウスに滞在して息子をサポートし、「夫は息子の様子を日々細かく教えてくれたほか、わが家と同じ境遇の先輩ママに、ドナーである私の退院後のサポートなどについて色々とアドバイスをもらっていた」と、家族同士の支え合いが生まれることを証言しています[7]
事例5:奈良から兵庫県立こども病院への通院
奈良県に住む6歳の息子を持つ母親の事例では、息子の原因不明の病気で兵庫県立こども病院に入院した際、神戸ハウスを約2ヶ月間利用しました[10]。この家族は「息子が兵庫県立こども病院から転院し、京都での付添い生活が始まると状況は一変しました。京都ではドナルド・マクドナルド・ハウスのような施設が無かったため、私は病院の大部屋で簡易ベッドに寝泊まりし」た経験から、ハウスの重要性を実感したと述べています[10]
利用者からの感謝の声
家族同士の絆の形成
多くの利用者が、ハウスでの同じ境遇の家族との出会いを重要視しています[11][8]。「子の病という共通の痛みを持つ方との出会いの場でもあり、現在でも懇意にさせて頂いています」という声や[11]、「かけがえのないお母さん同士の出会いの場所となったハウス」という表現[8]が示すように、精神的な支えとしての役割も大きく果たしています。
経済的・物理的支援への感謝
「病院の隣に施設があることで、面会時間ギリギリまで病室にいられ、すぐに病院へ駆けつけられる安心感は何にも代えがたいものでした」[10]という声や、「遠方から来られているご家族にとって、とても有難い施設です」[4]という評価が多く寄せられています。
まとめ
ドナルド・マクドナルド・ハウスは、病気の子どもとその家族が直面する経済的、物理的、精神的な負担を軽減する重要な社会インフラとして機能しています[1][7]。1974年の開設以来、世界中で数十万の家族を支援し、日本でも財団設立から25年間でのべ85,000以上の家族を支援してきました[12]。利用者の声からは、単なる宿泊施設を超えて、家族の絆を深め、同じ境遇の人々との出会いの場を提供する「第二のわが家」としての役割を果たしていることが分かります[9][10][8]

  1. https://www.dmhcj.or.jp/house/     
  2. https://www.weblio.jp/content/ドナルドマクドナルドハウス   
  3. https://ja.wikipedia.org/wiki/ドナルド・マクドナルド・ハウス    
  4. https://ameblo.jp/mi580113/entry-12797339960.html       
  5. https://gritmedical.info/2025/04/13/macdonaldohouse/    
  6. https://www.mcdonalds.co.jp/sustainability/local/dmhcj/
  7. https://www.dmhcj.or.jp/special/monthlysupporter/   
  8. https://www.dmhcj.or.jp/anniversary/story/story12.html    
  9. https://www.dmhcj.or.jp/anniversary/story/story7.html  
  10. https://kyoto-house.jp/2025/06/23/「ハウスで支えられた日々への感謝。あの時受け/   
  11. https://www.dmhcj.or.jp/anniversary/story/story17.html 
  12. https://www.youtube.com/watch?v=-xzn0Q2WyqQ


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