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一次性夜尿症のメカニズム:なぜ起こるのか? 20250730
一次性夜尿症は、生まれてから一度も夜尿が完全に治まることなく続いている状態を指します。これは、しつけや本人の気持ちの問題ではなく、いくつかの身体的な発達の未熟さが重なって起こると考えられています。
主なメカニズムは、睡眠中の「尿量」と「膀胱の容量」のバランスが崩れ、さらに「尿意で目が覚めない」という3つの要因が複雑に関係しています。
1. 夜間の尿量が多い(夜間多尿)
健康な人の場合、夜間は**抗利尿ホルモン(バソプレシン)**の分泌量が増加します。このホルモンは、腎臓での尿の生成を抑える働きがあり、夜間の尿量を昼間の6〜7割程度に減らしてくれます。
しかし、夜尿症のお子さんの中には、この抗利尿ホルモンの夜間の分泌リズムが未熟なため、睡眠中も昼間と同じように多くの尿が作られてしまうことがあります。その結果、膀胱の容量を超えてしまい、夜尿につながります。
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特徴: 一晩の尿量が多く、おむつやパッドがずっしりと重くなる傾向があります。
2. 睡眠中の膀胱容量が小さい(機能的膀胱容量の未熟性)
膀胱は筋肉でできた袋であり、成長とともに容量も大きくなっていきます。また、睡眠中は自律神経の働きにより、膀胱がリラックスして日中よりも多くの尿を溜められるようになります。
夜尿症のお子さんの場合、この膀胱の機能的な発達が追いついていないことがあります。そのため、睡眠中に尿を十分に溜めておくことができず、比較的少ない尿量でも膀胱がいっぱいになってしまいます。
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特徴: 昼間でもトイレが近い(頻尿)、尿意を我慢するのが苦手といった傾向が見られることがあります。
3. 尿意による覚醒が困難(睡眠覚醒の未熟さ)
夜尿症の根本的な原因として、この覚醒の問題が挙げられます。たとえ夜間の尿量が多く、膀胱が小さかったとしても、膀胱に尿がたまったときに尿意を感じて目を覚ますことができれば、トイレに行くことができます。
しかし、夜尿症のお子さんは睡眠が深い、あるいは睡眠のパターンが未熟であるため、膀胱からの「いっぱいになった」という信号が脳に届いても、目を覚ますことができません。そのため、無意識のうちに排尿してしまいます。
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特徴: ご家族が夜中に起こそうとしてもなかなか起きない、または起こされてトイレに行っても翌朝覚えていない、といった様子が見られます。
その他の関連要因
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遺伝的要因: 夜尿症は遺伝との関連が強いことが知られています。ご両親のどちらかに夜尿症の既往がある場合、お子さんが夜尿症になる確率は高まります。これは、抗利尿ホルモンの分泌パターンや膀胱の機能、睡眠の深さといった体質が遺伝しやすいためと考えられています。
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便秘: 腸内に便が溜まっていると、すぐ後ろにある膀胱が圧迫され、尿を十分に溜められなくなることがあります。便秘を解消することで夜尿が改善するケースも少なくありません。
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ストレス: 直接的な原因となることは稀ですが、環境の変化などによる精神的なストレスが自律神経のバランスを乱し、排尿のコントロールに影響を与える可能性はあります。
これらの要因が一つ、あるいは複数重なり合うことで、一次性夜尿症は引き起こされます。多くの場合、体の成長とともにこれらの機能が成熟し、自然に改善していきますが、症状が続く場合は専門医に相談し、適切な指導や治療を受けることが大切です。