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成長痛とは? 20250806
成長痛は、子どもが成長期に経験する足の痛みで、特に夕方から夜間にかけて現れることが多いものです 。多くの場合、太ももの前面、ふくらはぎ、膝の裏側など、比較的広い範囲の筋肉に痛みを感じます 。関節自体が痛むことはほとんどなく、翌朝には痛みが消えて元気に活動できるのが特徴です 。
「成長痛」という名前から「骨が成長するから痛い」と思われがちですが、実は医学的には「成長そのもの」が痛みを引き起こすという直接的な証拠はほとんどありません 。痛みの原因は一つではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合っていると考えられています。
成長痛の主なメカニズム(有力な説)
成長痛の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、現在、以下の説が有力視されています。
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筋肉の疲労や使いすぎ 子どもは日中にたくさん走り回ったり、飛び跳ねたりと活発に活動します。この過度な身体活動が、足の筋肉に負担をかけ、夜間に筋肉痛のような痛みとして現れるという考え方です 。多くの保護者が、子どもの活動量が増えた後に痛みを訴えることが多いと報告しており、この説を裏付けています 。
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骨と筋肉の成長速度の不均衡 成長期には、骨が筋肉よりも速く伸びることがあります。この成長速度のズレによって、筋肉や腱に引っ張られるようなストレスや張力が生じ、それが痛みにつながるという説です 。特に、成長スパートのピークを迎える時期に痛みが顕著になることがあります 。この不均衡を和らげるために、筋肉のストレッチングが有効であるという研究もあります 。
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痛覚閾値の低下(痛みに敏感な体質) 成長痛を訴える子どもは、そうでない子どもに比べて痛みに敏感である(痛覚閾値が低い)可能性が指摘されています 。これは、「疼痛増幅症候群(AMPS)」と呼ばれる状態と関連していると考えられています 。AMPSでは、脳や脊髄といった中枢神経系が、本来は痛みではない感覚刺激を痛みとして誤って解釈し、増幅してしまうことがあります 。この過剰な痛み信号が、さらに血管を収縮させ、筋肉への酸素供給を減らし、乳酸などの老廃物を蓄積させることで、痛みをさらに強める悪循環を引き起こすと考えられています 。
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心理的・精神的な要因 ストレスや不安といった心理的な要因が、痛みの発生や悪化に影響を与える可能性も指摘されています 。例えば、家族に成長痛の経験者が多い場合や、親の不安レベルが高い場合に関連が見られることがあります 。これは、痛覚閾値の低下とも関連し、心理的なストレスが神経系の過敏性を高め、痛みをより強く感じさせることにつながる可能性があります 。
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ビタミンD欠乏 ビタミンDは骨の成長に重要な栄養素であり、その不足が成長痛の一因となる可能性も示唆されています 。ビタミンDが不足すると、骨の表面にある骨膜(痛覚神経が豊富にある部分)に圧力がかかり、痛みを引き起こすと考えられています 。実際に、ビタミンDが不足している子どもにビタミンDを補給することで、痛みが軽減したという研究報告もあります 。
注意すべき点(成長痛ではない可能性)
成長痛は基本的に心配のない痛みですが、中には治療が必要な病気が隠れている場合もあります。もしお子さんの痛みが以下の症状を伴う場合は、早めに医療機関を受診しましょう 。
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痛む箇所に腫れや熱がある
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痛みのせいで足を引きずる、歩きたがらない
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朝起きても痛みが引かず、一日中続く
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痛みが特定の関節に集中している
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発熱、食欲不振、体重減少などの全身症状がある
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特定の外傷と関連している
これらの症状は、オスグッド病や関節炎、感染症など、成長痛とは別の病気の可能性を示唆しています 。自己判断せず、気になる症状がある場合は、一度専門医に相談することが大切です 。
痛みを和らげるには
成長痛に特別な治療法はありませんが、痛みを和らげるための対処法があります 。
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優しくマッサージする:痛む部分を優しくさすってあげると、子どもは安心し、痛みが和らぐことが多いです 。
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温める:温かいお風呂に入れたり、温湿布や温かいタオルを当てたりするのも効果的です 。
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痛み止めを使う:痛みがひどく、眠れないような場合は、医師や薬剤師に相談の上、市販の痛み止め(アセトアミノフェンやイブプロフェンなど)を適切に使用することもできます 。
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ストレッチ:筋肉の柔軟性を高めるストレッチも、痛みの軽減に役立つことがあります 。
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安心させる:何よりも、保護者が子どもの痛みに共感し、「大丈夫だよ」と安心させてあげることが大切です 。抱きしめたり、優しく触れてあげたりすることで、痛みが和らぐこともあります 。
成長痛は、子どもの成長の一時的な通過点であり、ほとんどの場合、思春期後期までに自然に治まります 。