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卵黄を食べると吐くんです・・・食物蛋白誘発胃腸炎かも? 20250818
食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES: Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome)は、特定の食物に含まれるタンパク質が原因で引き起こされる、消化管アレルギーの一種です。一般的な食物アレルギーとは異なり、IgE抗体というアレルギー反応に関わる抗体が関与しない「非IgE依存性アレルギー」に分類されます。そのため、血液検査でアレルギー反応の有無を調べても陰性となることが多く、診断が難しい場合があります。
主な症状
FPIESの主な症状は、胃腸炎に似たものが特徴です。
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嘔吐: 原因となる食物を摂取してから1〜6時間後に、繰り返し激しい嘔吐が起こることが多いです。
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下痢: 水様便や下痢が見られます。場合によっては血便を伴うこともあります。
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顔色の悪さ・ぐったりする: 嘔吐や下痢により脱水が進み、顔色が悪くなったり、元気がない、ぐったりするといった症状が出ることがあります。
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体重増加不良: 慢性の経過をたどる場合、下痢などによって栄養の吸収が悪くなり、体重が増えないといった症状が見られることもあります。
一般的な食物アレルギーでみられる蕁麻疹や呼吸困難などの皮膚・呼吸器症状は、FPIESでは通常見られません。
原因となる食物
乳児では、主に以下の食物が原因となることが多いです。
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乳(ミルク)
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卵(特に卵黄)
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大豆
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米
成人では、魚介類が原因となることが報告されています。
診断
FPIESの診断は、症状の経過や食事内容を詳しく問診することが重要です。
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問診: 原因食物の摂取後、症状がいつから、どのような頻度で出たかなどを確認します。
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除去・負荷試験: 疑わしい食物を一定期間完全に除去し、症状が改善するかどうかを確認します。その後、医師の管理下で少量ずつ摂取させる「経口食物負荷試験」によって診断を確定します。
IgE抗体検査(血液検査)が陰性となることが多いため、この検査だけで診断はできません。
治療法
治療の基本は、原因となる食物を完全に除去することです。
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原因食物の除去: 症状が出ないように、原因食物を一定期間完全に避けます。
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代替食品の検討: 原因食物の除去によって栄養が偏らないよう、管理栄養士と相談しながら代替食品を検討します。
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自然治癒の確認: FPIESは成長とともに自然に治癒することが多いため、医師の指示に従って定期的に経口食物負荷試験を行い、治癒したかどうかを確認します。
もし、お子さんが離乳食を始めた後、繰り返し嘔吐や下痢の症状が見られる場合、FPIESの可能性もありますのでご相談ください。