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熱がなかなか下がらない・・・好中球減少症について 20250824
好中球減少症は、血液中の好中球の数が異常に減少した状態を指します。好中球は白血球の一種であり、体内に侵入した細菌や真菌(カビ)などの病原体と戦う重要な役割を担っています。そのため、好中球が減少すると感染症にかかりやすくなり、重症化するリスクが高まります。
好中球減少症の定義と重症度分類
好中球減少症は、血液中の好中球数が1,500/μL以下になった状態を指します。さらに、その数によって以下のように重症度が分類されます。
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軽度: 1,000/μL以上1,500/μL未満
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中等度: 500/μL以上1,000/μL未満
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重度(高度): 500/μL未満
好中球数が500/μL未満になると、感染症のリスクが著しく高まるとされています。
原因
好中球減少症には様々な原因があり、主に以下の2つに大別されます。
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好中球の産生低下: 骨髄での好中球の生成がうまくいかないケース
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好中球の消費・破壊の亢進: 血液中で好中球が急速に消費されたり、破壊されたりするケース
具体的な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
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薬剤性: 抗がん剤の副作用が最もよく知られていますが、甲状腺機能亢進症の治療薬など、多くの薬剤が原因となりえます。
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感染症: インフルエンザや麻疹などのウイルス感染症、重症細菌感染症などが原因となることがあります。
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自己免疫疾患: 好中球を破壊する自己抗体ができることで発症することがあります。
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血液疾患: 白血病、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群など、骨髄に異常がある場合に起こります。
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先天性: 生まれつき好中球が少ない病気で、稀なケースです。周期性好中球減少症なども含まれます。
症状
好中球減少症自体には、特有の自覚症状がないことが多いです。多くの場合、好中球の減少によって引き起こされる感染症の症状として発見されます。
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発熱: 感染症の最も重要な徴候であり、特に好中球減少と発熱が同時に見られる「発熱性好中球減少症」は重篤な状態と判断され、緊急の治療が必要です。
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口腔内の潰瘍や痛み
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咽頭炎、肺炎、皮膚の赤み、下痢など、感染した部位に応じた症状
好中球減少が重度の場合、感染症が起こっても炎症の兆候(赤み、腫れ、痛みなど)が乏しいことがあり、発熱だけが唯一のサインとなる場合もあるため注意が必要です。
診断と治療
診断は、血液検査で白血球数と好中球の割合を調べることで行われます。
治療は、好中球減少症の原因によって異なります。
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薬剤性の場合: 原因となっている薬剤の中止や変更が検討されます。
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感染症が原因の場合: 抗生物質や抗ウイルス薬などによる治療が行われます。
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重度の好中球減少症: 感染症のリスクが非常に高いため、無菌室での管理や、好中球を増やす薬(G-CSF製剤)の投与が検討されます。
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発熱性好中球減少症: 重症化のリスクが高いため、感染部位が特定できなくても、すぐに広域スペクトラムの抗菌薬の点滴投与が開始されます。
好中球減少症と診断された場合は、医師の指示に従い、感染予防策を徹底することが非常に重要です。