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足に赤いぶつぶつ・・・IgA血管炎かも 20250827
IgA血管炎について解説します。
1. IgA血管炎とは
IgA血管炎は、以前はヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)とも呼ばれていた、全身の小さな血管に炎症が起こる病気です。この炎症は、免疫グロブリンの一種であるIgAが血管壁に沈着することによって引き起こされます。
主に小児に多く見られ、特に3〜10歳の男児に好発します。多くの場合、風邪などの感染症をきっかけに発症することが知られています。
2. 主な症状
IgA血管炎は、以下の4つの症状が特徴的で、「4徴」と呼ばれます。これらの症状はすべてが同時に現れるわけではなく、順番に出現することもあります。
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皮膚症状(紫斑)
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触ると少し盛り上がっている、赤紫色の斑点やあざ(触知性紫斑)が、主に下肢や臀部(お尻)に現れます。
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紫斑は押しても色が消えないのが特徴です。
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発疹から始まり、時間とともに紫斑に変化することもあります。
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関節症状
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約80%の患者に見られ、膝や足首などの大きな関節に痛みや腫れを伴うことが多いです。
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関節リウマチとは異なり、関節に変形が残ることはありません。
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消化器症状
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約60〜70%の患者に見られ、腹痛、吐き気、嘔吐、血便などが起こります。
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腹痛が非常に強く、腸重積(腸が折り重なる状態)などの重篤な合併症を引き起こすこともまれにあります。
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腎臓の障害
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約20〜60%の患者で合併し、尿に血液(血尿)やタンパク質(蛋白尿)が混ざることがあります。
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皮膚症状が出現してから1ヶ月以内に発症することが多いとされています。
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多くは軽症ですが、ごくまれに腎不全に進行する可能性もあるため、注意が必要です。特に成人では腎障害が重症化しやすい傾向があります。
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3. 治療法
軽症の場合、安静にしていれば自然に治癒することが多いです。しかし、症状の程度や合併症の有無によって治療法は異なります。
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軽症の場合
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安静にして経過を観察します。
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関節の痛みには、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使用されることがあります。
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重症の場合
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腹痛がひどい場合や腎臓の障害が認められる場合、ステロイド薬が中心となって用いられます。
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重症な腎炎を伴う場合は、ステロイドパルス療法や免疫抑制剤、血漿交換などが検討されることもあります。
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腹痛が強い場合は、飲食を制限して腸を休ませる絶飲食が選択されることもあります。
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4. 予後
IgA血管炎の多くは自然に治癒し、予後は良好です。しかし、腎臓の障害を合併した場合は、長期的な経過観察が必要となることがあります。特に成人例では腎障害が重症化するリスクがあるため、慎重な対応が求められます。
症状が再発することもありますが、ほとんどの場合は徐々に落ち着いていきます。