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アトピー治療とステロイド忌避     20250831

ステロイド忌避とは、ステロイド外用薬を正しく理解せず、副作用を過度に恐れて使用をためらう、あるいは拒否する傾向のことです。


 

歴史的背景とマスコミ報道の影響

 

ステロイド外用薬は、1950年代に皮膚科領域で使われ始めました。その強力な抗炎症作用から、アトピー性皮膚炎などの治療に革命をもたらしました。しかし、長期間、大量に使用すると、皮膚が薄くなる、毛細血管が拡張する、ニキビができやすくなるといった副作用が報告されるようになりました。

こうした副作用は、1970年代から1980年代にかけて、特定の医療従事者や、それを鵜呑みにしたマスコミによって過度に強調されるようになります。特に、**「脱ステロイド」**を提唱する一部の医療者が登場し、マスコミがその主張を大々的に報じたことが、ステロイド忌避を決定的に広める要因となりました。

マスコミの報道は、以下のような点でステロイド忌避を助長しました。

  • 極端な副作用の強調: ステロイドを「劇薬」や「麻薬」と表現し、副作用の深刻さを過度に煽りました。本来は医師の指導のもとで適切に使用すれば安全な薬であるにもかかわらず、その側面が無視されました。

  • 「ステロイド離脱症状」の誤解: 長期使用後に急にやめると、リバウンド現象として症状が悪化することがあります。これは、正しく減量すれば防げるものですが、マスコミはこれを「ステロイド依存症」や「ステロイドの毒性」として報道し、恐怖を植え付けました。

  • 代替療法の礼賛: ステロイドの危険性を強調する一方で、科学的根拠が乏しい民間療法や健康食品を「安全な治療法」として紹介し、ステロイドから代替療法への誘導を促しました。

  • 感情的な訴え: 実際にステロイドの副作用に苦しんだ患者やその家族の体験談をセンセーショナルに報じることで、視聴者の不安を煽り、感情的にステロイドを忌避するように誘導しました。

これらの報道により、多くの患者がステロイドに対する不信感を抱くようになり、医師の処方通りに使用しなかったり、自己判断で中断したりするケースが増加しました。結果として、症状が悪化し、治療が長期化する悪循環に陥る患者が後を絶たなくなりました。


 

現在の認識と課題

 

現在では、ステロイド外用薬は適切な強さ、量、期間で使用すれば、副作用を最小限に抑えつつ、アトピー性皮膚炎などの炎症を効果的に抑えることができる標準的な治療薬として認識されています。日本皮膚科学会をはじめとする専門機関は、ステロイド忌避の危険性を訴え、正しい知識の普及に努めています。

しかし、過去のマスコミ報道の影響は根強く残っており、一部の患者や保護者の間では、未だにステロイドに対する強い抵抗感が存在します。このため、医療現場では、ステロイドの安全性と必要性について、医師が患者と時間をかけて丁寧に話し合い、信頼関係を築くことが重要な課題となっています。


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