コラム一覧
中枢性思春期早発症 20250902
中枢性思春期早発症は、通常よりも早い時期に思春期が始まる状態です。具体的には、女の子は8歳未満、男の子は9歳未満で第二次性徴が始まるものを指します。これは、脳の視床下部から性ホルモンの分泌を促す信号が prematurely (時期尚早に) 出されることが原因で起こります。
発症メカニズム
思春期は、通常、脳の視床下部から GnRH (ゴナドトロピン放出ホルモン) が分泌されることで始まります。この GnRH が下垂体を刺激し、卵巣や精巣を刺激するホルモン (LH, FSH) の分泌を促します。これらのホルモンが、女の子の場合は卵巣からエストロゲンを、男の子の場合は精巣からテストステロンを分泌させ、第二次性徴が進行します。中枢性思春期早発症では、この一連のプロセスが通常より早く、何らかの原因によって前倒しで開始されてしまうのです。
主な症状と影響
-
女の子: 乳房の発育、陰毛・脇毛の発生、月経の開始など
めやす:7歳6か月未満で乳房発育
8歳未満で陰毛、腋毛
10歳6か月未満で初経 -
男の子: 睾丸や陰茎の拡大、陰毛・脇毛の発生、声変わりなど
めやす:10歳未満で陰毛
11歳未満で腋毛、ひげ、声変わり
思春期の進行が早いと、骨の成長も加速するため、一時的に身長が伸びますが、骨端線が早く閉鎖してしまうため、最終的な成人身長が低くなる可能性があります。また、精神的な発達が身体の発達に追いつかず、心理的なストレスや戸惑いを抱えることもあります。
原因と診断
原因
多くの場合、原因不明 (特発性) ですが、まれに脳腫瘍、外傷、感染症などが原因となることもあります。特に男の子は、脳に何らかの病変があることが多いとされています。
診断
診断には、身体診察 (第二次性徴の確認)、血液検査 (性ホルモンや LH, FSH の測定)、骨年齢の測定 (手のレントゲン撮影で骨の発達具合を確認)、そして頭部 MRI 検査 (脳に病変がないかを確認) などが行われます。
治療法
治療の第一選択は、GnRH アナログと呼ばれる薬を使ったホルモン療法です。この薬は、脳から分泌される GnRH の働きを抑制し、思春期の進行を止める効果があります。注射によって数週間に一度投与され、思春期を再開してもよい時期 (女の子で11歳前後、男の子で12歳前後) まで治療を継続します。これにより、第二次性徴の進行を止め、成人身長の低下を防ぐことが期待されます。原因が脳の病気の場合は、その病気に対する治療も合わせて行われます。
