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ムンプス難聴 20250911
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)にかかると、合併症として「ムンプス難聴」を発症することがあります。これは、ムンプスウイルスが内耳に感染し、聴覚を司る細胞を破壊することで生じる感音性難聴です。ムンプス難聴は一度発症すると聴力が回復しないケースがほとんどで、特に予防が重要です。
👂 難聴のメカニズム
ムンプスウイルスが血液を介して内耳に侵入し、音を感知する有毛細胞や聴神経を障害すると考えられています。この障害によって音の信号を脳に送ることができなくなり、難聴が引き起こされます。
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症状: ムンプス難聴は、耳下腺の腫れが生じてから約2週間以内に急激に発症することが多いです。
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特徴:
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高度な難聴: ほとんどの場合、聴力が非常に低下します。
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片側性: 約95%が片耳のみに難聴が起こりますが、両耳に起こることもあります。
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回復不能: 一度破壊された有毛細胞は再生されないため、難聴は一生涯続く後遺症となることが多いです。
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注意点: 耳下腺の腫れや熱の程度と難聴の重症度は関係ありません。また、症状が現れない不顕性感染でも難聴になることがあります。特に、幼少期の子どもは片耳の難聴に気づきにくいため、発見が遅れることがあります。
🏥 治療と予防
ムンプス難聴に対する根本的な治療法は現在のところ確立されていません。発症後早期にステロイド薬の投与を行うことがありますが、効果は限定的です。そのため、ムンプス難聴を防ぐためには、流行性耳下腺炎の感染自体を予防することが最も重要です。
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予防: MMRワクチン(麻しん、おたふくかぜ、風しんの混合ワクチン)やおたふくかぜ単独ワクチンの接種が最も有効な予防策です。
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治療: 聴力を回復させる治療法がないため、難聴が残った場合は補聴器や人工内耳の装用が検討されます。
流行性耳下腺炎は決して軽視できない病気で、ムンプス難聴という深刻な後遺症を残す可能性があることを理解し、予防接種を検討することが大切です。
