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二重抗原曝露仮説    20250912

「二重抗原曝露仮説」は、食物アレルギーの発症メカニズムを説明する重要な概念です。この仮説は、アレルギーの原因物質(抗原)への曝露経路が、アレルギー反応を誘導するか、それともアレルギー反応を抑制するかを決定するという考え方に基づいています。

 

仮説の概要 🔬

 

この仮説のポイントは以下の2つです。

  1. 皮膚からの曝露(経皮感作):

    • 皮膚のバリア機能が壊れていると、食物抗原が皮膚から体内に入り込みやすくなります。

    • この場合、皮膚を介して入った抗原は、アレルギー反応を引き起こす免疫システムを活性化させ、「感作」と呼ばれるアレルギーの準備状態を作り出してしまいます。これが食物アレルギー発症の主な原因と考えられています。

    • アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚はバリア機能が壊れているため、経皮感作のリスクが高いとされています。

  2. 口からの摂取(経口免疫寛容):

    • 一方、健康な消化管を通して食物抗原を摂取すると、免疫システムはそれを異物として認識せず、アレルギー反応を起こさないようにする「免疫寛容」が誘導されます。

    • 適切な時期に、適切な量の食物を口から摂取することが、アレルギー予防に重要だと考えられています。

 

なぜ重要なのか? 🤔

 

この仮説は、アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関係を説明し、アレルギーマーチの予防につながる重要な示唆を与えています。

  • アトピー性皮膚炎が先行する理由:

    • 「アレルギーマーチ」は、アトピー性皮膚炎に始まり、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎といったアレルギー疾患が次々と発症する現象です。

    • 二重抗原曝露仮説は、皮膚バリア機能の破綻が最初のステップであり、アトピー性皮膚炎が原因で食物アレルギーが引き起こされるという流れを理論的に説明します。つまり、「卵アレルギーがあるからアトピーになるのではなく、アトピーがあるから卵アレルギーになる」という考え方です。

  • 予防への応用:

    • この仮説に基づき、乳児期のアトピー性皮膚炎を早期に発見し、保湿剤などで皮膚のバリア機能を整えることが、食物アレルギーの予防につながると考えられています。

    • また、アレルギー発症リスクの高い乳児に対し、適切な時期に少量の食物を摂取させることで、経口免疫寛容を促す研究も進められています。

 

最新の研究動向 🧬

 

最近の研究では、この仮説をさらに裏付けるメカニズムが解明されつつあります。

  • 東京大学の研究グループは、皮膚からの抗原曝露がアレルギー発症につながる特定のシグナル経路(PGD2シグナル)を突き止めました。このシグナルを阻害する薬剤の開発が、将来的な食物アレルギーの予防法につながると期待されています。

  • 国立成育医療研究センターの研究では、乳児期のアトピー性皮膚炎に早期治療介入することで、鶏卵アレルギーの発症予防に有効であることが実証されました。

これらの研究成果は、乳児期からのスキンケアが単にアトピー性皮膚炎の症状を和らげるだけでなく、その後の食物アレルギー発症を予防するための重要な戦略であることを示しています。


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