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乳糖不耐症    20250913

 

乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)とは、牛乳や乳製品に含まれる糖質である乳糖を消化・吸収する能力が低下している状態のことです。これは、乳糖を分解する消化酵素であるラクターゼの働きが不十分であることが原因で起こります。

 

原因

 

乳糖不耐症にはいくつかのタイプがあります。

  • 先天性乳糖不耐症: 生まれつきラクターゼが不足している稀なケースです。

  • 一次性(原発性)乳糖不耐症: 成長に伴いラクターゼの分泌量が減少し、乳製品を消化しにくくなるタイプです。アジア人やアフリカ人など、酪農の歴史が短い民族に多く見られます。これは病気というより、人間本来の生理的な状態であるという見方もされています。

  • 二次性乳糖不耐症: 胃腸炎など、腸の病気や手術によって一時的にラクターゼの働きが低下するタイプです。原因となる病気が治れば、徐々に改善していくことが多いです。

 

症状

 

乳糖不耐症の主な症状は、乳糖を含む食品(牛乳や乳製品)を摂取した後に起こる消化器系の不快な症状です。摂取後、数時間以内に症状が現れることが多いです。

  • 下痢:消化されなかった乳糖が大腸に送られ、水分を多く引き込むため、水様性の下痢を引き起こします。

  • 腹痛・腹部膨満感:大腸内の細菌が未消化の乳糖を発酵させることでガスが発生し、お腹の張りやゴロゴロとした不快感、けいれん性の腹痛が生じます。

  • おなら:ガスの発生によるものです。

乳幼児の場合は、激しい下痢や体重増加不良を引き起こすことがあります。

 

対策と対処法

 

乳糖不耐症は、乳製品との上手な付き合い方で症状をコントロールすることができます。

  1. 乳製品の摂取を控える: 症状が強く出る場合は、牛乳や乳製品の摂取を一時的に控えることが基本的な対策です。ただし、自己判断で完全にやめてしまうと栄養バランスが偏る可能性があるため注意が必要です。

  2. 摂取の仕方を工夫する:

    • 少量ずつ、数回に分けて飲む: 一度に多量に摂取するのを避け、数回に分けて少量ずつ飲むことで、ラクターゼの働きを助け、症状が出にくくなる場合があります。

    • 温めて飲む: 冷たい牛乳は腸への刺激が強いため、温めて飲むのがおすすめです。

  3. 乳糖が少ない食品を選ぶ:

    • ヨーグルトやチーズ: ヨーグルトは乳酸菌によって乳糖が分解されているため、牛乳よりも症状が出にくい傾向があります。また、熟成チーズも製造過程で乳糖のほとんどが取り除かれているため、比較的安心して食べられます。

    • 無乳糖牛乳: 乳糖をあらかじめ分解してある「お腹にやさしい牛乳」なども市販されています。

  4. 酵素製剤の利用: 症状が強い場合や、どうしても乳製品を摂りたい場合は、医療機関で処方されるβ-ガラクトシダーゼ製剤(ラクターゼ酵素を補充する薬)を使用する方法もあります。

  5. 腸内環境の改善: 毎日少量ずつ牛乳を飲み続けることで、腸内細菌のバランスが整い、乳糖不耐の症状が改善したという研究結果も報告されています。

なお、牛乳アレルギーは、牛乳に含まれるタンパク質に対する免疫反応であり、乳糖不耐症とは全く異なるものです。症状が似ている場合もあるため、ご自身の症状がどちらに当てはまるか不安な場合は、医療機関に相談することをおすすめします。
 

 

 

β-ガラクトシダーゼ製剤とは

 

β-ガラクトシダーゼ製剤は、乳糖不耐症の症状を改善するために使用される消化酵素製剤です。有効成分であるβ-ガラクトシダーゼは、小腸で不足しているラクターゼという酵素と同じ働きをします。

  • 作用機序: 牛乳や乳製品に含まれる乳糖は、通常、小腸でラクターゼによってブドウ糖とガラクトースに分解され、体内に吸収されます。しかし、乳糖不耐症の人はこのラクターゼの働きが弱いため、乳糖が分解されずに大腸に送られてしまいます。β-ガラクトシダーゼ製剤を摂取すると、この酵素が消化管内で乳糖を分解してくれるため、腹痛や下痢などの症状を防ぐことができます。

  • 主な製品名: 日本国内では、医療用医薬品として「ガランターゼ」や「ミルラクト」といった製剤が知られています。

 

効果と使用方法

 

  • 効能・効果: 主に、乳児の乳糖不耐症による消化不良の改善、および経管栄養食や経口流動食摂取時の乳糖不耐による下痢などの改善に用いられます。

  • 使用方法: 一般的に、乳糖を含む食品を摂取する際に、食品と一緒に服用します。粉末状のものが多く、水やぬるま湯に溶かして飲んだり、食品に混ぜて摂取したりします。ただし、酵素の活性は50℃以上で低下するため、熱い飲み物などに混ぜる際は注意が必要です。

 

入手方法について

 

日本国内におけるβ-ガラクトシダーゼ製剤は、原則として医療用医薬品に分類されます。そのため、入手方法は限定されています。

  1. 医療機関を受診する:

    • 乳糖不耐症の診断を受け、医師が必要と判断した場合に処方されます。

    • 症状や体の状態を考慮した上で、適切な製剤や用量が医師から指示されます。

    • 保険適用となるため、比較的安価に手に入れることができます。

  2. 海外からの個人輸入:

    • 海外では、β-ガラクトシダーゼを含むサプリメントが、ドラッグストアやオンラインショップで市販されていることがあります。

    • これらの製品は個人輸入という形で入手できる場合もありますが、以下の点に注意が必要です。

      • 自己判断での使用: 医師の診断を受けていない場合、本当に乳糖不耐症による症状なのか判断が難しく、効果がない可能性があります。

      • 品質や安全性: 海外製品は日本の医薬品としての承認を受けておらず、品質管理や安全性にばらつきがある可能性があります。

      • 副作用のリスク: アレルギー反応などの副作用が起こる可能性があり、万が一の場合の対処が難しくなります。

      • 法律上の制限: 個人輸入には、輸入できる量や種類に制限があるため、厚生労働省の規定を確認する必要があります。

 

まとめ

 

  • β-ガラクトシダーゼ製剤は、乳糖不耐症による消化器症状を改善する効果的な薬剤です。

  • しかし、日本では医師の処方が必要な医療用医薬品であり、市販薬としては流通していません。

  • 安全かつ効果的に使用するためには、必ず医療機関を受診し、医師の指示に従って使用することが最も重要です。

  • 自己判断で海外製品などを安易に使用することは、健康上のリスクを伴うため推奨されません。

ご自身の症状でお悩みの場合、まずは医療機関を受診し、医師に相談することをおすすめします。


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