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CAKUT(先天性腎尿路異常)と3歳健診尿検査の意義 20250914
CAKUT(Congenital Anomalies of the Kidney and Urinary Tract)は、日本語で先天性腎尿路異常と呼ばれる、腎臓や尿管、膀胱、尿道といった尿路系の形態や機能に生まれつき異常がある病気の総称です。腎臓の形成異常(小さすぎる、片方しかないなど)や、尿路の通過障害などが含まれます。
CAKUTは、小児が慢性腎不全に至る最大の原因であり、早期発見と適切な治療が非常に重要です。
CAKUTの種類と症状
CAKUTには、非常に多くの種類があります。代表的なものとして以下のような病態が含まれます。
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低形成腎・異形成腎: 腎臓が正常に発達せず、小さかったり、構造が不完全だったりする状態です。軽度の場合は無症状ですが、重度の場合は早期に腎機能不全に陥ることがあります。
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尿管や尿道の通過障害: 尿の流れがせき止められ、腎臓や尿管に尿がたまる水腎症などを引き起こします。尿路感染症を繰り返したり、腎機能障害の原因となります。
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膀胱尿管逆流: 膀胱の尿が尿管を通り、腎臓に逆流してしまう状態です。尿路感染症や腎機能障害を引き起こすことがあります。
CAKUTの症状は、異常の程度によって様々です。胎児期にエコー検査で発見されることも多いですが、出生後、多飲・多尿、体重増加不良、低身長、尿路感染症の反復などで見つかることもあります。また、軽度な場合は成人してから腎機能低下が進み、発覚することもあります。
3歳児健診の尿検査の意義
3歳児健診の尿検査は、腎臓や尿路の先天異常を早期に発見するための重要な機会です。特に、CAKUTのような先天的な病気は、自覚症状がないまま進行することが多いため、健診でのスクリーニングが不可欠です。
3歳児健診の尿検査では、主に以下の項目を調べます。
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尿蛋白: 尿の中に通常は検出されない量のタンパク質が混じっていないかを確認します。腎炎や腎機能障害の可能性を示唆します。
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尿潜血: 尿の中に血液が混じっていないかを確認します。尿路の炎症や、腎臓の異常を示唆します。
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尿糖: 尿に糖が混じっていないかを確認します。糖尿病や腎臓の機能異常の可能性を示唆します。
これらの検査で異常が見つかった場合、すぐに病気と断定されるわけではありませんが、精密検査を勧められ、CAKUTの早期発見につながることがあります。
乳幼児の尿は薄く、尿検査だけでは異常が見つけにくい場合もありますが、3歳児健診はほぼすべての子どもが受ける機会であるため、CAKUTを見つける貴重な第一歩となります。この段階で発見され、適切な治療や経過観察を行うことで、将来的な慢性腎不全への移行を防いだり、その進行を遅らせることが期待できます。
3歳健診と学校健診で尿検査の目的が異なります。
学校健診の尿検査の主な目的は、慢性腎臓病の早期発見と糖尿病のスクリーニングです。
これは、3歳児健診の目的であるCAKUT(先天性腎尿路異常)の発見とは少し異なります。学校健診の対象年齢(6~18歳頃)では、CAKUTに加えて、自覚症状がほとんどないまま進行する**慢性糸球体腎炎(特にIgA腎症)**や、糖尿病といった病気が見つかることがあります。
慢性腎臓病の早期発見
慢性腎臓病の多くは初期に自覚症状が乏しく、発見が遅れると将来的に腎不全に至り、人工透析が必要になる場合があります。学校健診では、尿蛋白と尿潜血を調べることで、以下のような病気の早期兆候を見つけます。
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慢性糸球体腎炎: 腎臓の糸球体に炎症が起き、尿にタンパク質や血液が混じる病気。特に、IgA腎症は学校検尿で最も多く発見されます。
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ネフローゼ症候群: 大量の尿蛋白が排出され、全身にむくみが出る病気。
早期に発見し、適切な治療や生活指導を行うことで、病気の進行を防ぎ、子どもの将来的な健康を守る重要な役割を担っています。
糖尿病のスクリーニング
学校健診では、尿糖の検査も行います。尿に糖が検出される場合、糖尿病の可能性が考えられます。特に、小児に多い1型糖尿病は、急激に発症することがあり、尿検査が発見のきっかけとなることもあります。無症状の段階で異常を見つけることで、重症化を防ぐことができます。
このように、学校健診の尿検査は、成長期の子どもたちに多い慢性的な病気を早期に発見し、適切な医療につなげることで、将来の健康を守るための重要な公衆衛生事業なのです。