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意識喪失の原因は? 20250915
小児が突然意識を失う原因は多岐にわたりますが、主に以下のカテゴリーに分類できます。
1. 失神(Syncope)
失神は、一時的に脳への血流が不足することで起こる、短時間の一過性意識消失です。小児の意識消失の原因として最も一般的です。
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血管迷走神経性失神(Vasovagal syncope): 最も多いタイプで、「脳貧血」とも呼ばれます。長時間立っていたり、強い痛みや精神的ストレス、排便などが引き金となることがあります。
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起立性調節障害(Orthostatic dysregulation): 思春期の子供に多く、起立時に血圧が急激に低下し、めまいや動悸、意識消失などを引き起こします。朝なかなか起きられない、午前中体調が悪いなどの症状を伴うことがあります。
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心臓性失神(Cardiogenic syncope): 非常にまれですが、不整脈や心臓の構造的な異常(心筋症など)が原因で起こる重篤な失神です。運動中や興奮時に突然意識を失った場合は、この可能性を考慮し、速やかに医療機関を受診する必要があります。
2. てんかん発作(Epileptic seizures)
脳の神経細胞が異常に興奮することで起こる発作で、意識消失を伴うことがあります。
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欠神発作(Absence seizure): 前回の回答で解説したように、数秒から数十秒の間、突然意識が途切れ、動作が停止する発作です。
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強直間代発作(Tonic-clonic seizure): 全身のけいれんを伴い、意識を完全に失います。
3. その他
上記のほかにも、意識消失を引き起こす要因があります。
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息止め発作(Breath-holding spell): 乳幼児に多く見られる症状で、激しく泣いたり怒ったりした後に呼吸を止め、顔色が青紫色(チアノーゼ)になり、意識を失うことがあります。ほとんどの場合、数分以内に自然に回復し、成長とともに消失します。
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熱性けいれん(Febrile seizure): 高熱時に起こるけいれんで、意識消失を伴います。生後6か月から5歳頃までの乳幼児に多く見られます。
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過換気症候群(Hyperventilation syndrome): 強い不安やストレスが原因で呼吸が速くなりすぎ、血液中の二酸化炭素が減少し、めまいや意識消失を引き起こすことがあります。
小児が意識を失った場合は、自己判断せず、速やかに医療機関を受診して原因を特定し、適切な診断と治療を受けることが重要です。特に、けいれんを伴う、回復が遅い、または運動中に意識を失った場合は、緊急性が高いと判断されます。