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ウイルス性胃腸炎 20250928
ウイルス性胃腸炎とは
ウイルス性胃腸炎は、ウイルスへの感染によって引き起こされる胃や腸の病気です。一般的に「お腹のかぜ」とも呼ばれ、突然の嘔吐や下痢、腹痛、発熱などの症状が現れます。非常に感染力が強く、特に冬場に流行することが多いですが、年間を通して発生します。
主な原因ウイルス
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ノロウイルス: 冬季の感染性胃腸炎の主な原因ウイルスです。感染力が非常に強く、少量のウイルスでも感染します。
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ロタウイルス: 乳幼児に多く見られる胃腸炎の原因でしたが、ワクチンの普及により感染者は減少傾向にあります。しかし、成人も感染することがあります。
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アデノウイルス、サポウイルスなど: 年間を通して胃腸炎を引き起こすウイルスです。
症状
主な症状は以下の通りです。これらの症状は通常1〜3日程度続きます。
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吐き気・嘔吐
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下痢(水様便)
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腹痛
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発熱(38℃程度)
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頭痛、筋肉痛、倦怠感
特に、乳幼児や高齢者は脱水症状を起こしやすいため、こまめな水分補給が非常に重要です。
感染経路
ウイルス性胃腸炎は、主に以下の経路で感染が広がります。
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接触感染: 感染者の便や吐物に触れた手指を介して、ウイルスが口に入り感染します。ドアノブや手すり、おもちゃなどを介して感染することもあります。
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飛沫感染(経口感染): 感染者の吐物や便が乾燥し、細かな粒子となって空気中を漂い、それを吸い込むことで感染します。
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食品からの感染: ウイルスに汚染された食品(特にカキなどの二枚貝の生食や加熱不十分なもの)を食べることで感染します。
治療法
ウイルス性胃腸炎に特効薬はなく、治療は症状を和らげる対症療法が中心となります。
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安静: 体力を消耗しないよう、ゆっくりと休みましょう。
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水分補給: 最も重要な治療です。嘔吐や下痢によって失われた水分と電解質を補うため、経口補水液などを少しずつ、こまめに飲みましょう。
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食事: 症状が落ち着いてきたら、おかゆやうどん、すりおろしたリンゴなど、消化の良いものから少しずつ食べ始めましょう。
下痢止めは、ウイルスを体外に排出するのを妨げてしまう可能性があるため、自己判断での使用は避け、必ず医師に相談してください。
【重要】吐物の処理方法(二次感染を防ぐために)
ウイルス性胃腸炎、特にノロウイルスの場合、吐物や便には大量のウイルスが含まれています。不適切な処理は、家族内や施設内での集団感染を引き起こす最大の原因となります。乾燥するとウイルスが空気中に舞い上がってしまうため、迅速かつ適切に処理することが極めて重要です。
準備するもの
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使い捨てのマスク
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使い捨ての手袋(2枚重ねが望ましい)
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使い捨てのエプロン、ガウン(なければ大きめのゴミ袋で代用可)
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ペーパータオル、新聞紙、古い布など
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大きめのゴミ袋(2枚)
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塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)
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空のペットボトルなど(消毒液を作るため)
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バケツ
※注意: アルコール消毒はノロウイルスなど一部のウイルスには効果がありません。必ず次亜塩素酸ナトリウムを使用してください。
処理の手順
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換気と準備
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処理をする人以外は、吐物から最低でも2メートルは離れさせ、別室に移動してもらいます。
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窓を開けて十分に換気します。
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マスク、エプロン、手袋を着用します。手袋は2枚重ねにするとより安全です。
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吐物の除去
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吐物の上にペーパータオルなどを静かに広げて覆いかぶせます。
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外側から内側に向かって、汚染範囲を広げないように静かに拭き取ります。
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拭き取ったペーパータオルは、すぐにゴミ袋に入れます。
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消毒
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吐物があった場所を中心に、広めの範囲(半径1〜2メートル程度)を、**薄めた塩素系漂白剤(0.1%)**に浸したペーパータオルで覆い、床を湿らせます(湿布するようなイメージ)。
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そのまま10分程度放置して消毒します。
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10分後、ペーパータオルを回収し、ゴミ袋に捨てます。
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その後、水拭きをして洗剤成分を取り除きます。
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後片付け
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使用した手袋、マスク、エプロンなどは、汚染面に触れないように外側を内側に丸め込みながら外し、ゴミ袋に入れます。
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ゴミ袋は空気を抜き、口を固く縛ります。さらに、もう1枚のゴミ袋に入れて二重にし、しっかりと縛ってから廃棄します。
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処理が終わったら、石けんと流水で30秒以上かけて丁寧に手を洗います。爪の間や指の付け根もしっかり洗いましょう。
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塩素系消毒液の作り方
市販の家庭用塩素系漂白剤(ハイター、ブリーチなど。塩素濃度約5%)を使用した場合の希釈方法です。
用途 | 濃度 | 作り方(500mlペットボトルの場合) |
吐物・便の処理、トイレの消毒 | 0.1% | **ペットボトルのキャップ2杯(約10ml)**の漂白剤を入れ、水を加えて500mlにする。 |
ドアノブ、おもちゃ、調理器具などの消毒 | 0.02% | **ペットボトルのキャップ0.5杯弱(約2ml)**の漂白剤を入れ、水を加えて500mlにする。 |
【消毒液使用上の注意】
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作り置きは効果が薄れるため、その都度作りましょう。
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使用する際は換気を十分に行ってください。
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金属を腐食させたり、衣類を色落ちさせたりする性質があるため、使用場所には注意してください。
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他の洗剤(特に酸性タイプ)と混ぜると有毒なガスが発生するため、絶対に混ぜないでください。
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皮膚に直接つかないように注意してください。
汚れた衣類の洗濯
汚れた衣類は、そのまま洗濯機に入れると他の衣類にウイルスが付着し、洗濯槽内も汚染されます。
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バケツなどで、まず水洗いをして汚物を丁寧に洗い流します。
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薄めた塩素系漂白剤(0.02%)に30分〜1時間ほどつけ置きして消毒します。
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その後、他の洗濯物とは分けて洗濯機で洗濯します。
*色柄物などで塩素系漂白剤が使えない場合は、85℃以上の熱湯に1分以上つけることでも消毒効果が期待できます(素材の耐熱性を要確認)。スチームアイロンを当てるのも有効です。