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座薬の入れ方講座 20251017
初めての育児をするお母様からの質問で、最も多いものの一つが座薬問題です。お子さんの体調変化だけでもご不安な上に、慣れないお薬の対応に戸惑うことも多いかと思います。特に座薬の入れ方は、多くの方が悩まれるポイントですので、ご質問いただくのはとても大切なことです。
お子さんへの上手な座薬(坐薬)の入れ方と注意点
座薬は、肛門から吸収されて全身に効果を発揮するお薬です。嘔吐している時や眠っている時、お薬が苦手なお子さんにも確実に投与できるという利点があります。正しく使うことで、お薬の効果を最大限に引き出すことができます。
1. 座薬を入れる前の準備
慌てずスムーズに行うために、事前準備がとても大切です。
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手指を清潔にする: まずは石鹸で手をきれいに洗ってください。
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必要なものを揃える: 座薬、ティッシュ、おむつなどをすぐに使えるように手元に用意します。
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お子さんの体勢を整える: 新しいおむつに替えた後など、リラックスした状態で行うのが理想です。
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座薬の確認: 処方されたお薬の種類、名前、使用期限を必ず確認してください。
2. 座薬の正しい入れ方(手順)
お子さんに不安を与えないよう、優しく声をかけながら素早く行いましょう。
【挿入の向きについて】
座薬は弾丸のような形をしていますが、太い方(鈍い方)から肛門に入れるのが、実は最も抜けにくい正しい方法です。細い方から入れると、肛門の筋肉(括約筋)の収縮によって、細い先端が押し出されてしまうことがあります。太い方から入れると、腸の蠕動(ぜんどう)運動によって自然と奥へと運ばれていきます。
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お子さんを寝かせます
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乳児の場合: 仰向けに寝かせ、おむつ替えの時のように両足を優しく持ち上げます。
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幼児の場合: 横向きに寝かせ、上の子の足を「くの字」に曲げさせると、肛門がよく見えて入れやすくなります。(シムスの体位)
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座薬を準備します
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包装から座薬を取り出します。硬くて入れにくそうな場合は、手で少し温めると表面が滑らかになります。
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滑りを良くするために、座薬の先端を水で濡らしたり、ベビーオイルやオリーブオイルを少量塗ったりすると挿入がスムーズになります。
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座薬を挿入します
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お子さんのお尻の穴(肛門)を優しく広げます。
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座薬の太い方から、肛門にゆっくりと挿入します。
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お子さんの指の第一関節分くらい(約2〜3cm)まで、スッと押し込みます。中途半端だとすぐに出てきてしまうので、ためらわずにしっかり入れてあげましょう。
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挿入後はおさえます
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挿入後、ティッシュなどでお尻の穴を数秒〜数十秒間、軽く圧迫するように押さえます。こうすることで、お子さんがいきんで座薬を出してしまうのを防ぎます。
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しばらく(2〜3分)は、お子さんを抱っこしたり、安静にさせたりして、お薬が溶けて吸収されるのを待ちましょう。
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複数の座薬を入れる場合の正しい使い方
解熱剤と吐き気止めの制吐剤など、2種類以上の座薬が処方されることもあります。その場合の使い方のポイントを解説します。
原則:同時に2つ入れない
複数の座薬を同時に入れたり、立て続けに入れたりするのは避けてください。直腸内で薬剤がうまく広がらず、十分な効果が得られない可能性があります。また、肛門への刺激が強くなり、両方とも便と一緒に出てきてしまうリスクも高まります。
正しい手順
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まず1種類目の座薬を入れます。
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上記で解説した「正しい入れ方」で、まず1つ目の座薬を挿入します。
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解熱剤と制吐剤のように、特に医師から指示がない場合は、どちらを先に入れても効果に大きな差はありません。
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時間をあけてから2種類目を入れます。
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1種類目の座薬が直腸内で溶けて吸収されるまで、最低でも10分、できれば30分程度の間隔をあけてください。
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この時間をあけることで、それぞれの薬剤がしっかりと吸収され、効果を最大限に発揮できます。また、お子さんの肛門への負担も軽減されます。
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【なぜ時間をあける必要があるのか?】
座薬は直腸の粘膜から吸収されます。1つ目の座薬が溶けて粘膜に広がる前に次の座薬が入ると、薬剤同士が干渉したり、吸収される面積が限られたりしてしまいます。十分な間隔をあけることは、それぞれの薬効をしっかり得るために非常に重要です。
よくある質問と対処法
Q. 座薬がすぐに出てきてしまいました。どうすればいいですか?
A.
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挿入後5分以内で、座薬が溶けずにそのままの形で出てきた場合は、新しい座薬をもう一度入れ直してください。
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挿入後10分以上経っている場合や、溶けた状態で出てきた場合は、すでにある程度は吸収されていると考えられます。過剰投与を避けるため、自己判断で追加せず、かかりつけの医師や薬剤師に相談してください。
Q. 座薬を入れた直後にうんちをしてしまいました。
A.
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うんちの中に座薬がそのままの形で混ざっているのが確認できた場合は、新しい座薬を入れ直してください。
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座薬が見当たらない場合は、すでに吸収されている可能性が高いです。この場合も、過剰投与を防ぐために追加はせず、様子を見てください。熱が下がらないなど、症状が改善しない場合は、医師に相談しましょう。
この解説が、少しでもご不安の解消に繋がり、お子さんの穏やかな看病の一助となれば幸いです。もしご不明な点があれば、遠慮なくかかりつけの医療機関にご相談ください。
