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赤ちゃんの歩行器、なぜ推奨されない?    20251018

赤ちゃんの歩行器について、日本の小児科学会は安全面や発達への影響からその使用を推奨していません。海外でも同様の理由から規制を強化しており、特にカナダでは販売自体が禁止されています。

 

日本小児科学会が推奨しない主な理由

 

日本の小児科学会をはじめ、多くの専門家が歩行器の使用を推奨しない主な理由は、**「重大な事故のリスク」「子どもの発達への悪影響」**の2点に集約されます。

 

1. 重大な事故につながる危険性

 

歩行器を使用することで、赤ちゃんの移動速度と行動範囲が格段に広がります。これにより、保護者が予測できないような様々な危険にさらされることになります。

  • 転倒・転落: わずかな段差や敷居、コード類につまずいて転倒したり、階段や玄関から転落したりする事故が多発しています。これらの事故は、頭部外傷や骨折など、深刻な怪我につながる可能性があります。

  • やけど・溺水: 歩行器に乗ることで普段は届かない高さのものに手が届くようになり、テーブルの上の熱い飲み物や炊飯器の蒸気、ストーブなどに触れてやけどを負う危険があります。また、浴室やプールに侵入し、溺水するリスクも高まります。

  • 保護者の反応が間に合わない: 赤ちゃんは歩行器に乗ると秒速1メートル以上で移動できるとも言われており、保護者が近くにいても、危険な状況に瞬時に反応することは極めて困難です。

 

2. 発達への悪影響

 

歩行器は、赤ちゃんの健やかな運動発達を助けるどころか、むしろ妨げになる可能性が指摘されています。

  • 歩行開始の遅れ: 歩行器に頼ることで、本来の自然な発達過程である「おすわり」「はいはい」「つかまり立ち」といった経験が不足しがちになります。これらの動きは、歩行に必要な筋力やバランス感覚を養う上で非常に重要であり、歩行器の使用が結果的に自立歩行の開始を遅らせることがあります。

  • 不自然な歩き方の習得: 歩行器ではつま先で床を蹴って進むことが多くなるため、不自然な歩き方が癖になってしまうことがあります。

  • 身体への負担: 腰がしっかりとすわっていない時期からの使用は、赤ちゃんの未熟な背骨や股関節に過度な負担をかける恐れがあります。

 

海外における歩行器の厳しい現状

 

海外では、日本以上に歩行器の危険性が深刻に受け止められており、厳しい規制が敷かれています。

  • カナダ:「販売禁止」という厳しい措置

    カナダでは、乳幼児の安全を脅かす危険な製品であるとして、2004年から国内での歩行器の販売、輸入、宣伝が法律で禁止されています。これは中古品の取引も対象となり、違反した場合には高額な罰金が科せられる可能性があります。

  • アメリカ:「販売禁止」を強く勧告

    米国小児科学会(AAP)は、長年にわたり歩行器の危険性を訴え、その製造および販売の禁止を強く勧告しています。AAPは「歩行器には何のメリットもなく、本質的に危険な製品」との見解を示しており、安全基準が強化された後も依然として多くの事故が報告されていることから、代替品として歩行器の機能がない固定式のプレイセンター(ジャンパルーなど)の使用を推奨しています。

このように、国内外の小児科医や専門機関は、赤ちゃんの安全と健やかな発達のために歩行器の使用を推奨していません。一見便利な育児グッズに見えますが、その裏にある大きなリスクを理解することが重要です。


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