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不器用なこども…DCD(発達性協調運動障害)   20251026

DCD(発達性協調運動障害)は、一般に「不器用さ」として知られる状態が、日常生活や学習に大きな支障をきたす場合に診断される神経発達障害の一つです。

本人の努力不足や、親の育て方が原因ではなく、脳が体の動きを計画し、調整する機能(協調運動)に生まれつき困難さがある状態と考えられています。

 

DCD(発達性協調運動障害)とは?

 

定義

DCDは、知的な発達に遅れがなく、明らかな麻痺などの神経疾患や筋疾患もないにもかかわらず、年齢相応に期待される運動技能の習得や実行が著しく困難な状態を指します。

「協調運動」とは、例えば「目でボールを見て、手でキャッチする」「姿勢を保ちながら、手で文字を書く」といった、体の複数の部分を同時に、または順序立ててスムーズに動かす運動のことです。DCDのお子さんは、この「協調」が苦手です。

頻度

5歳から11歳の子どもの約5〜6%に見られるとされ、30人クラスに1〜2人程度いる計算になります。男の子に多い傾向があるとされています。

 

主な症状・特徴

 

困難さは、体の大きな動き(粗大運動)と、手先の細かな動き(微細運動)の両方、またはどちらかに現れます。

1. 粗大運動の困難さ(体の大きな動き)

  • 姿勢が悪く、ぐにゃぐにゃしているように見える

  • よく転ぶ、物にぶつかる

  • 走る、ジャンプする、スキップするなどの動作がぎこちない

  • ボール遊び(投げる・捕る)が極端に苦手

  • 自転車の練習がなかなか進まない

  • 縄跳びや鉄棒、マット運動などが苦手

2. 微細運動の困難さ(手先の細かな動き)

  • お箸やスプーン、フォークをうまく使えない(食べこぼしが多い)

  • ハサミを使う、のりで貼るなどの工作が苦手

  • ボタンをかける、チャックを上げる、靴ひもを結ぶなどの着替えに時間がかかる

  • 文字を書くのが苦手(マスからはみ出す、筆圧が強すぎる/弱すぎる、字の形が整わない)

 

年齢別の現れ方(例)

 

  • 乳幼児期: 寝返り、はいはい、歩き始めなどの運動発達がゆっくり。

  • 幼児期: 積み木がうまく積めない、パズルが苦手、着替えや食事が自分でうまくできない。

  • 学童期: 体育の授業についていけない、リコーダーや鍵盤ハーモニカの演奏が難しい、書字の困難さ(板書を写すのが遅いなど)で学習に影響が出る。

 

原因

 

はっきりとした原因は不明ですが、運動の計画、実行、調整を担う脳(特に小脳や大脳基底核など)の機能的な問題が関係していると考えられています。

重要なのは、本人の「怠け」や「やる気がない」せいではないということです。

 

DCDとの併存

 

DCDは、他の発達障害と併存(併発)することが非常に多いのが特徴です。

  • ADHD(注意欠如・多動症): 約50%が併存するとも言われ、不注意や多動・衝動性に加え、不器用さが目立つ場合があります。

  • SLD(限局性学習症): 特に書字に困難がある場合(ディスグラフィア/書字表出障害)と関連が深いです。

 

周囲の関わり方・サポート

 

DCDそのものを根本的に「治す」というよりは、本人が生活しやすくなるように「工夫する」「練習する」ことが中心となります。

  1. 本人の努力不足を責めない

    最も重要なことです。「なぜできないの」「練習が足りない」と叱責することは、子どもの自己肯定感を著しく下げてしまいます。不器用さは本人のせいではないことを、まず周囲の大人が理解することがスタートです。

  2. 成功体験を積ませる

    「できた!」という達成感を味わえるよう、課題のハードルを下げたり、得意なことを見つけて褒めたりすることが大切です。

  3. 環境を調整する・便利な道具を使う

    • 書字: 持ちやすい鉛筆グリップを使う、マス目の大きなノートを使う。

    • 食事: 持ちやすいスプーンやフォーク、滑り止めマットを使う。

    • 着替え: ボタンの代わりにマジックテープやスナップボタンの服を選ぶ、紐靴ではなくスリッポンやマジックテープの靴を選ぶ。

  4. 専門家による療育(リハビリテーション)

    困難さが大きい場合は、専門家(主に作業療法士や理学療法士)によるサポートが有効です。

    • 作業療法(OT): 日常生活の動作(書字、箸、着替えなど)がうまくできるように、その子に合った練習方法を考えたり、道具の選定や環境調整のアドバイスをしたりします。

    • 理学療法(PT): バランス能力や体の使い方など、基本的な運動機能の向上を目指します。

もしお子さんの不器用さが日常生活や園・学校生活で目立つようであれば、かかりつけの小児科医や、地域の保健センター、発達支援センター、児童精神科などに相談することをご検討ください。


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