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1か月健診     20251027

生後1か月の乳児健診(一か月健診)を、従来の分娩施設(産婦人科)から小児科へ移行させようと日本小児科学会が推奨しており、一部の自治体では公費助成(無料化)とセットで小児科での実施を試験的に導入するケースが出てきています。

この背景には、**「赤ちゃんの健康と発達の専門家である小児科医が、早期から継続的に関与すべき」**という考え方があります。


 

小児科での1か月健診実施事例

 

まだ全国的な取り組みではなく、市区町村単位での試験的な導入が主です。

  1. 東京都世田谷区

    • 概要: 以前から1か月健診の費用助成(受診票の発行)を行っており、区内の小児科医療機関で受診することを推奨しています。

    • 特徴: かかりつけ医機能の強化を目的としています。出生直後からのかかりつけ医(小児科)との関係構築を促し、その後の予防接種や急な体調不良時にスムーズに相談できる体制を目指しています。

  2. 千葉県市川市

    • 概要: 2018年度(平成30年度)から、生後1か月児の健康診査費用助成を開始しました。

    • 特徴: 市内の指定小児科医療機関で受診できます。産婦人科での受診も可能ですが、小児科での受診を推奨する案内がされています。

  3. その他の自治体(例:埼玉県さいたま市、神奈川県横浜市など)

    • 多くの政令指定都市や中核市でも、同様に1か月健診の公費助成(受診票の配布)が始まっています。

    • これにより、保護者は産婦人科か小児科かを選びやすくなりましたが、自治体は「かかりつけ医」となる小児科での受診を推奨する傾向にあります。


 

1か月健診を小児科で行うことのメリット

 

小児科学会が推奨する主な理由は以下の通りです。

  • 専門性の高い診察:

    心雑音の聴取、黄疸の評価、股関節の開き(先天性股関節脱臼のスクリーニング)、体重増加の評価など、新生児特有の所見を小児科医が専門的に診察できます。

  • 継続的なフォローアップ:

    健診をきっかけに「かかりつけ医」が決まります。これにより、2か月から始まる予防接種のスケジュール相談や、その後の発育・発達のフォロー、急な病気の際の対応がスムーズになります。

  • 早期発見・早期介入:

    万が一、先天性の疾患や発達上の問題が見つかった場合、専門の小児医療機関への連携が迅速に行えます。


 

移行における問題点と課題

 

産婦人科から小児科への移行には、いくつかのハードルがあります。

 

1. 保護者(特に母親)の負担

 

  • 産後の体調: 産後1か月は、母親の体調(産褥期)がまだ回復しきっていない時期です。

  • 受診の「二度手間」: 多くの分娩施設では、母親自身の「産後1か月健診」と赤ちゃんの健診を同日に行います。もし赤ちゃんの健診だけを小児科で行う場合、母親は「産婦人科(自分の健診)」と「小児科(赤ちゃんの健診)」の2か所に出向く必要があります。新生児を連れての外出は負担が大きく、非現実的だという意見が多いです。

 

2. 小児科クリニック側の体制

 

  • 感染対策: 小児科クリニックの待合室は、風邪や胃腸炎など感染症の子供が多くいます。免疫が未熟な新生児を、他の患児と分けて待たせる体制(専用の待合室、健診専用の時間枠の設定など)が必要です。

  • 周産期情報の連携: 赤ちゃんが生まれた時の情報(体重、黄疸の有無、分娩時の状況など)は産婦人科が持っています。この情報が小児科医にスムーズに連携される仕組み(紹介状など)が不可欠ですが、現状では徹底されていない場合があります。

 

3. 産婦人科側の事情

 

  • 分娩施設での完結希望: 産婦人科側としては、妊娠・分娩から産後のケアまでを一貫して行いたいという意向があります。特に母親のメンタルケア(産後うつなど)も、赤ちゃんの様子と併せて見ることで効果的に行える側面もあります。

 

4. 制度・費用の問題

 

  • 「任意」健診であること: そもそも1か月健診は、3〜4か月健診などと異なり、母子保健法で定められた「義務」の健診ではありません(任意)。

  • 公費助成の格差: 上記の通り、公費助成(無料化)を実施している自治体と、実施していない(全額自費)自治体があります。助成がない地域では、保護者は費用面も考慮して受診先を選ぶことになります。


 

まとめ

 

小児科医による専門的かつ継続的なケアという「理想」と、産後間もない母親と新生児が2か所の医療機関を受診しなければならない「現実的な負担」とが、現在ぶつかり合っている状況です。

今後の理想的な形としては、以下のような方向性が考えられます。

  • 母親の産後健診(産婦人科)と赤ちゃんの1か月健診(小児科)が、同日・同施設で受けられる体制(総合病院や周産期センターなど)。

  • それが難しい場合でも、産婦人科と地域の小児科が密に連携し、情報共有がスムーズに行われること。

  • 小児科クリニック側が、新生児専用の健診時間を設け、感染対策を徹底すること。


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