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チャドクガ皮膚炎 20251028
チャドクガ(茶毒蛾)による皮膚炎は、その幼虫(毛虫)が持つ**毒針毛(どくしんもう)**に触れることで引き起こされる、強いかゆみを伴う皮膚の炎症です。
原因:毒針毛(どくしんもう)
チャドクガの皮膚炎の直接の原因は、目に見えないほど細かい(約0.1mm)「毒針毛」という毛です。
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毒針毛の場所: この毛は、幼虫(毛虫)だけでなく、その抜け殻、蛹(さなぎ)、成虫(蛾)の体表、さらには卵塊(メスが卵を産むときに腹部の毛を付着させるため)にも付着しています。
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感染経路:
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直接接触: 毛虫や蛾に直接触れる。
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間接接触: 風で飛ばされた毒針毛が皮膚や衣服に付着する。毛虫がいた木の下を通るだけで被害にあうこともあります。
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衣服経由: 外に干していた洗濯物に毒針毛が付着し、それを着たときに発症する。
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主な症状
毒針毛が皮膚に刺さると、数時間後(早い場合は直後)から以下のような症状が現れます。
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強いかゆみ: 最も特徴的な症状で、チクチクとした痛みやかゆみが非常に強く出ます。
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発疹: 鮮やかな赤いブツブツ(丘疹:きゅうしん)が、触れた部分を中心に広範囲に現れます。
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症状の悪化: かゆいからといって掻きむしると、毒針毛がさらに折れて皮膚の奥に入り込んだり、別の場所に広がったりして症状が悪化します。
症状は通常1〜2週間ほど続きます。
発生時期と場所
チャドクガは年に2回(春の4月〜6月と、夏の8月〜9月)発生します。
特に注意が必要な場所は、以下の「ツバキ科」の植物です。
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ツバキ(椿)
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サザンカ(山茶花)
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チャ(茶の木)
これらの植物が植えられている公園、生け垣、庭木には特に注意が必要です。
対処法(もし触れたら)
毒針毛に触れた(または触れた可能性がある)場合の対処法は、**「こすらない・掻かない」**ことが最も重要です。
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こすらない・掻かない
絶対にこすったり掻いたりしないでください。毒針毛が折れて皮膚に深く刺さったり、被害が広がったりします。
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毒針毛の除去(テープ)
セロハンテープやガムテープなどの粘着テープを、患部にそっと貼り付け、ゆっくり剥がす作業を数回繰り返します。これにより、皮膚に刺さっている毒針毛を取り除きます。
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洗い流す(シャワー)
テープで除去した後、こすらずに、石鹸をよく泡立てて、大量の流水(シャワーなど)で優しく洗い流します。
※お湯は血行を良くし、かゆみを増強させることがあるため、冷たい水かぬるま湯が望ましいです。
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薬の塗布
皮膚を清潔にした後、市販の抗ヒスタミン剤やステロイド成分を含む軟膏を塗布します。
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衣服の処理
身につけていた衣服にも毒針毛が付着している可能性が非常に高いです。
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すぐに着替え、他の洗濯物とは分けて洗濯します。(可能であれば、50℃以上のお湯で洗濯するか、乾燥機にかけると毒の成分が変性しやすいと言われています)
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洗濯が難しい場合は、粘着テープで衣服全体を丁寧にケアします。
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予防と対策
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近づかない: チャドクガが発生しやすい木(ツバキ、サザンカ)には、発生時期(春と夏)はむやみに近づかないでください。
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肌の露出を避ける: これらの木の近くで庭仕事や作業をする際は、長袖、長ズボン、手袋、帽子、メガネを着用し、肌の露出を最小限にします。
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洗濯物: 発生時期は、これらの木の下や風下に洗濯物を干すのを避けます。
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駆除: 庭木などで幼虫が集団で発生しているのを見つけたら、触らずに専門の業者に駆除を依頼するか、園芸用の殺虫剤で駆除します。駆除作業の際も、毒針毛を吸い込んだり浴びたりしないよう、完全防備で行う必要があります。
かゆみや発疹が非常に強い場合や、広範囲に広がった場合は、我慢せずに受診してください。
