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小児片頭痛     20251031

小児の片頭痛(migraine)は、成人とは異なる特徴を持つことがあります。

 

疫学 (Epidemiology)

 

  • 有病率: 小児の片頭痛の有病率は、年齢とともに増加します。

    • 学童期(7歳頃)で約4〜5%。

    • 思春期では約10%に達し、成人と同じくらいの有病率になります。

  • 性差:

    • 学童期までは男女差がほとんどありません。

    • 思春期以降は女子の有病率が男子の約2〜3倍になります。


 

分類 (Classification)

 

小児の片頭痛は、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)に基づいて分類されますが、小児期に特有の病型や症状もあります。

 

1. 前兆のない片頭痛

 

最も一般的な病型です。前兆(オーラ)を伴いません。

 

2. 前兆のある片頭痛

 

頭痛の前に、一過性の神経症状(前兆、オーラ)を伴います。視覚前兆(きらきらした光、ギザギザした線など)が最も多いです。

 

3. 小児期の周期性症候群

 

片頭痛に関連する、小児期に特有の一時的な症候群です。これらが将来的に片頭痛へ移行することがあります。

  • 反復性腹痛(腹部片頭痛): 臍周囲の激しい腹痛を繰り返します。頭痛を伴わないことが多いです。

  • 周期性嘔吐: 激しい嘔吐を繰り返します。

  • 良性発作性めまい: 突然のめまい発作を繰り返します。

  • 良性発作性斜頚: 乳幼児に見られる、頭を片側に傾ける発作です。


 

自然歴 (Natural History)

 

  • 小児期に始まった片頭痛は、約半数が成人期まで持続します。

  • 成人期に改善または消失する例もありますが、頭痛の性状が変化して別の種類の頭痛になったり、上記のような周期性症候群から典型的な片頭痛へ移行したりすることもあります。

  • 思春期、特に女性ではホルモンの影響で頭痛が悪化したり、月経関連片頭痛として発症したりすることがあります。


 

治療法 (Treatment)

 

小児の片頭痛治療は、急性期治療(頭痛発作の改善)と予防療法(頭痛発作の頻度や重症度の軽減)に分けられます。

 

1. 急性期治療

 

  • 軽〜中等度の発作:

    • アセトアミノフェン非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(例:イブプロフェン、ナプロキセン)を、なるべく発作の早期に服用します。

  • 重度の発作または上記で効果がない場合:

    • トリプタン系薬剤(例:スマトリプタン、ゾルミトリプタン)を使用します。小児への適応が認められている薬剤を選択し、医師の指示に従います。

 

2. 予防療法

 

頭痛の頻度が多い(例:月4回以上)、日常生活に大きな支障をきたしている、急性期治療の効果が乏しい場合に考慮されます。

  • 薬物療法:

    • バルプロ酸ナトリウムトピラマートなどの抗てんかん薬、プロプラノロールなどの$\beta$遮断薬が用いられることがあります。

    • サプリメント(例:マグネシウムビタミン$B_2$)が有効な場合もあります。

  • 非薬物療法:

    • 生活習慣の改善(後述)やバイオフィードバック認知行動療法などが推奨されます。


 

鑑別疾患 (Differential Diagnosis)

 

小児の頭痛は、片頭痛以外のより重篤な疾患や、別の種類の頭痛の可能性もあるため、鑑別が必要です。

  • 二次性頭痛:

    • 脳腫瘍: 特に早朝の頭痛嘔吐を伴う頭痛、進行性の症状の悪化、神経学的な異常所見を伴う場合は要注意です。

    • 髄膜炎/脳炎: 発熱項部硬直、意識障害などを伴います。

    • 水頭症: 頭囲の拡大、泉門の膨隆(乳幼児)、視力障害などを伴うことがあります。

    • 副鼻腔炎: 鼻汁、鼻閉、顔面痛を伴うことがあります。

    • 薬物乱用頭痛: 急性期治療薬の過剰使用により、慢性的な頭痛を引き起こすものです。

  • 一次性頭痛(片頭痛以外のもの):

    • 緊張型頭痛: 締め付けられるような痛み、両側性、軽〜中等度で身体活動で悪化しないことが多いです。

    • 群発頭痛: 小児では稀ですが、片側の激しい頭痛、目の充血、鼻水などを伴います。


 

日常生活での対処法 (Daily Management)

 

薬物治療だけでなく、生活習慣の改善が片頭痛の管理において非常に重要です。
 

1. 頭痛日誌

  • 詳細: いつ、どこが、どれくらいの強さで痛んだか、誘発因子は何か、何をしたら良くなったかを記録し、医師と共有します。

2. 規則正しい生活

  • 詳細: 十分な睡眠(年齢に応じた時間)、決まった時間での起床・就寝が重要です。

3. 食事と水分補給

  • 詳細: 欠食(特に朝食)を避け、カフェインや特定の食品(人による)が誘発因子となる場合は避けます。脱水は頭痛を誘発するため、十分な水分補給を行います。

4. ストレス管理

  • 詳細: 学校や家庭でのストレスや不安が誘発因子となることがあるため、リラックスできる時間を作ったり、運動を取り入れたりします。

5. 誘発因子の回避

  • 詳細: 強い光、騒音、特定の匂い、天候の変化などが誘発因子となる場合、可能な範囲で回避を試みます。

6. 適度な運動

  • 詳細: 定期的な有酸素運動は頭痛の頻度と重症度を軽減する可能性があります。


発作時には、暗くて静かな部屋安静にし、冷却(例:冷たいタオルを額や首に当てる)が有効な場合もあります。


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