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アデノウイルスの出席停止扱いは闇が深い 20251103
流行性角結膜炎(はやり目)、咽頭結膜熱(プール熱)とアデノウイルス扁桃炎は、同じアデノウイルスが原因の疾患なのですが、出席停止の取り扱いに若干異なる部分があります。目の症状がある場合は2類、そうでない場合はその他の感染症というくくりになります。同じアデノウイルスによる感染症でも、学校保健安全法(以前の学校保健法)における取り扱いが異なるのは、主に感染力の強さや感染経路の違い、そして集団生活での感染拡大リスクの程度に基づいています。
🏫 隔離(出席停止)対象の違い
学校保健安全法では、感染症をその感染力や公衆衛生上の重要性から「第一種」から「第三種」に分類し、それぞれ出席停止の基準を定めています。
| 感染症名 | 病原体 | 法における分類 | 出席停止の基準 | 主な感染経路 |
| 流行性角結膜炎(EKC) | アデノウイルス | 第二種 | 医師が感染のおそれがないと認めるまで | 接触感染(眼分泌物、手など) |
| 咽頭結膜熱(プール熱) | アデノウイルス | 第二種 | 主要症状が消退した後2日を経過するまで | 飛沫感染、接触感染、プール水を介した感染 |
| アデノウイルス扁桃炎 | アデノウイルス | その他の感染症 | 通常、出席停止の措置は必要ないと考えられる(学校医等の判断に委ねられる) | 飛沫感染、接触感染 |
🧬 扱いが異なる主な理由
1. 感染経路・感染力の違い
アデノウイルスは多くの病型を引き起こしますが、特に目の症状を伴う場合は、ウイルスが眼の分泌物に多量に含まれ、接触感染によって急速かつ広範囲に伝播するリスクが高まります。
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流行性角結膜炎(EKC):眼の接触感染が主であり、タオルや器具、手を介して感染力が非常に強く、学校や家庭内での集団感染を引き起こしやすいです。
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咽頭結膜熱:飛沫感染に加え、プール水を介した感染が特徴的であり、集団での活動で感染が広がりやすいため、第二種感染症として厳格に管理されています。
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アデノウイルス扁桃炎:発熱や咽頭痛が主で、一般的な飛沫感染・接触感染で広がりますが、EKCや咽頭結膜熱と比較して、学校などの集団生活における感染拡大リスクが低いと判断されています。
2. 重症化リスクと公衆衛生上の重要性
学校保健安全法で第二種に分類される感染症は、学校内で流行を広げる可能性が高く、公衆衛生上重要な疾患と位置づけられています。アデノウイルス扁桃炎(風邪症状が主)は、より一般的な風邪として扱われ、第二種感染症のリストには含まれていません。
3. 法的規定の明確化
学校保健安全法施行規則では、**「咽頭結膜熱」と「流行性角結膜炎」**を明確に第二種感染症として指定することで、学校現場における登校停止の判断基準を明確にしています。一方で、「アデノウイルス扁桃炎」のみの場合は、法令上は「その他の感染症」に分類され、「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」という柔軟な対応が可能です(多くのケースで出席停止は不要と判断されます)。
つまり、同じ病原体であっても、**「目の病変の有無(特に眼脂などの接触感染源)」や「集団での感染拡大様式(プール、濃厚接触)」**の観点から、集団生活における感染リスクが異なると判断され、法的な取り扱いに差が設けられているのです。
しかし、八千代市の保育園に提出する登園許可証明書には「咽頭結膜熱・アデノウイルス感染症(プール熱)」「流行性角結膜炎(はやり目)」と表記されています。園の関係者もこの表記だけ見れば、アデノウイルスはすべて登園許可証が必要だと勘違いしてしまいます。法律上は目の症状がなければ、風邪と同じ扱いと解釈できるので、本来は登園許可は必要ありません。
この説明を毎回保育園に説明するのですが、法律上の問題よりも、社会的配慮が上回るようで、必ずと言っていいほど「とりあえず許可証もらってきてください」といわれるようです。とほほ・・・
無駄な受診はできるだけ控えたいのですが何とかなりませんかね~
