コラム一覧
水いぼ vs いぼ 20251126
水いぼ(伝染性軟属腫)と一般的な「いぼ」(尋常性疣贅)は、どちらもウイルス感染によるものですが、原因となるウイルスの種類、症状の現れ方、そして治療方針が大きく異なります。
1. 水いぼ(正式名称:伝染性軟属腫)
主に乳幼児から小学校低学年の小児に多く見られる、光沢のあるドーム状の発疹です。
【原因ウイルス】
伝染性軟属腫ウイルス(Molluscum contagiosum virus)
※ポックスウイルス科に属するDNAウイルスです。
【症状の特徴】
直径1〜5mm程度の、表面がツルツルとして光沢のある(真珠のような)やわらかいイボができます。イボの中央が少し窪んでいるのが特徴で、内容物としてウイルスを含んだ「軟属腫小体(モルスクム小体)」という白いチーズ状の塊が入っています。
【主な治療法】
大きく分けて「外科的摘除」と「自然治癒を待つ」の2つに分かれます。
-
外科的摘除(ピンセットによる除去)
専用のピンセット(トラコーマ鑷子など)を用いて、イボの中にあるウイルス塊(白色の芯)をつまみ取ります。確実性が高い方法ですが、痛みを伴うため、事前に「ペンレス」などの局所麻酔テープを貼付して痛みを和らげてから行うことが一般的です。
-
経過観察(自然治癒)
免疫ができると自然に消失するため、治療をせずに様子を見るという選択肢もあります。ただし、完治まで半年〜数年単位の長い時間がかかることや、その間に掻き壊して数が増えたり、他の子へうつしたりするリスクがあります。
-
その他の療法
痛みを伴う処置を避けるため、硝酸銀ペースト(銀イオン)の塗布や、漢方薬(ヨクイニン)の内服が行われることもありますが、即効性では外科的摘除に劣ります。
2. 一般的な「いぼ」(正式名称:尋常性疣贅)
手足の指や足の裏などにできやすく、大人にも子供にも見られる、表面がザラザラした硬いイボです。
【原因ウイルス】
ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus:HPV)
※パピローマウイルス科に属します。100種類以上の型があり、尋常性疣贅は主に2型、27型、57型などが原因とされています。
【症状の特徴】
水いぼとは対照的に、表面がザラザラとして硬く盛り上がり、カリフラワー状になることもあります。足の裏にできた場合は、体重で押し込まれてタコやウオノメのように見えることがありますが、表面を削ると小さな黒い点(点状出血)が見えるのが特徴です。
【主な治療法】
ウイルスが皮膚の奥(基底層)の細胞に感染しているため、水いぼのように「芯を取れば治る」という単純なものではなく、繰り返し治療を行い、免疫を活性化させて治していきます。
-
凍結凝固療法(液体窒素)
最も標準的な治療法です。マイナス196℃の液体窒素を綿棒やスプレーでイボに当て、ウイルスに感染した細胞を凍結・壊死させます。1〜2週間に1回の頻度で通院し、カサブタにして脱落させることを繰り返します。痛みを伴います。
-
サリチル酸外用(スピール膏など)
角質を軟化させる貼り薬や塗り薬を使い、感染した厚い皮膚をふやかして削り取る方法です。液体窒素と併用されることも多いです。
-
ヨクイニン内服
ハトムギの種子から抽出された漢方薬「ヨクイニン」を内服し、ウイルスに対する免疫能を高めることを期待する治療です。痛みがないため、液体窒素の痛みに耐えられない小児などに併用、あるいは単独で用いられます。
-
その他の療法
難治性の場合は、モノクロロ酢酸の塗布、電気焼灼、レーザー治療、ビタミンD3外用などが検討されることもあります。
まとめ
大きな違いを一言で言えば、水いぼは「ポックスウイルスによる、やわらかいイボ」であり、治療は「芯をつまみ取る」もしくは「自然治癒を待つ」のが基本であるのに対し、一般的なイボは「ヒトパピローマウイルスによる、硬いイボ」であり、治療は「液体窒素で焼く(凍らせる)」のが基本となります。
