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不思議の国のアリス症候群 20251129
「不思議の国のアリス症候群 (Alice in Wonderland Syndrome, AIWS)」は、自分の体や外界の物のサイズ、形、距離、時間の感覚などが一時的に歪んで感じられる、比較的まれな知覚の異常です。
物語『不思議の国のアリス』の中で、アリスが薬を飲んで体が大きくなったり小さくなったりするエピソードにちなんで名付けられました。
🍎 主な症状
視覚的な幻覚や錯覚が主症状で、眼球自体に異常はないのに、脳での情報処理の過程で異常が起こると考えられています。
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物の大きさの異常(変視症)
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大視症(マクロプシア): 周りの物や人が実際よりも非常に大きく見える。
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小視症(ミクロプシア): 周りの物や人が実際よりも非常に小さく見える。
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自分の身体感覚の異常
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自分の体の一部(手足や頭など)が急に大きくなったり、小さくなったり、変形したように感じる。
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距離感の異常
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物が実際よりも遠く見えたり(遠視症)、近く見えたりする(近視症)。
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廊下が果てしなく長く見える、地面が近すぎる/遠すぎるなど。
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形の異常(変視症)
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物が歪んで見えたり、曲がって見えたりする。
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時間感覚の異常
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時間が異常に速く進んでいるように感じたり(早送り)、逆にスローモーションのように遅く感じたりする。
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これらの症状は、数分から数時間で治まる一過性であることが多いです。
🧠 原因
はっきりとしたメカニズムは不明ですが、脳の特定の領域の機能の一時的な障害が示唆されています。原因として以下のものが挙げられています。
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片頭痛
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特に成人で多く見られ、作者のルイス・キャロル自身も片頭痛持ちであったと推測されています。
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感染症
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小児では、EBウイルスなどのウイルス感染による脳の炎症が原因となることが最も多いとされています。
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てんかん
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特に側頭葉てんかんなどの発作の一部として症状が現れることがあります。
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その他
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統合失調症、うつ病の初期症状、一部の向精神薬の副作用などでも報告されています。
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👶 小児期と成人期
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小児期の発症:EBウイルス感染などが原因のことが多く、ほとんどのケースで一過性であり、成長とともに消失することが多いです。
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成人期の発症:片頭痛に合併しているケースが多く見られます。
🩺 治療と対処
特別な治療法があるわけではなく、多くの場合、症状を引き起こしている基礎疾患の治療が中心となります。症状が眼球の病気ではないことを確認するため、まずは眼科を受診し、その後、小児科や神経内科(脳神経内科)、精神科などで診断・治療が行われます。
お子さんがこのような不思議な体験を話した場合は、頭ごなしに否定せず、まずは事実ではないことを理解しているかを確認し、不安を取り除いてあげることが大切です。
