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3歳児健診での視覚スクリーニングの重要性 20251204
1. 視力発達の「臨界期」
視力は生まれた直後から発達し始め、通常6歳頃までにほぼ完成するとされています。特に3歳頃までの時期は、視力の発達にとって非常に重要な「臨界期」にあたります。
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この時期に、屈折異常(遠視、近視、乱視、不同視)や斜視などの問題があると、網膜に鮮明な像が結ばれず、正常な視覚刺激が脳に伝わりません。
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その結果、視力の発達が妨げられ、「弱視」になってしまいます。
2. 弱視の治療効果が高い時期
弱視は、視力の発達が完了する前に治療を開始すれば、治癒する可能性が非常に高くなります。
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特に3歳頃までに発見し、矯正眼鏡の常用や**健眼遮閉(けんがんしゃへい)**などの治療を始めると、就学(6歳頃)までに良好な視力を得る可能性が高まります。
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視力発達の臨界期を過ぎてから治療を始めても、十分な視力回復が期待できなくなるため、「3歳」というタイミングでの検査が決定的に重要なのです。
3. 従来の検査の課題克服
従来の3歳児健診での視力検査は、家庭で**ランドルト環(Cの切れ目)**を使った検査を行うのが一般的でした。しかし、この方法には以下のような課題がありました。
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子どもの集中力や理解力が不足していると、正確な検査が難しい。
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保護者による検査結果の信頼性にばらつきが出ることがある。
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屈折異常や斜視といった弱視の原因を客観的に把握しにくい。
4. スポットビジョンスクリーナーの利点
スポットビジョンスクリーナーは、これらの課題を解決し、弱視の原因となる異常を客観的かつ迅速に検出できます。
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迅速で非侵襲的:子どもから約1メートルの距離から、数秒で両目の屈折異常(近視、遠視、乱視、不同視)や斜視を同時に測定できます。子どもに負担が少なく、泣いたり集中できなかったりしても、従来の検査より精度が高くなります。
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客観的な測定:専門知識のない健診スタッフでも使用でき、客観的なデータに基づいて異常の有無を判定できるため、眼科受診が必要な子どもを漏れなく見つけ出すことが期待できます。
この機器の導入により、弱視の見逃しを防ぎ、治療効果が最も期待できる3歳という早期に眼科専門医へつなげることが可能になるため、子どもの生涯にわたる「見る力」を守る上で極めて重要な意味を持ちます。
