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ノロウイルスワクチン開発中(その2)    20251207

ノロウイルスワクチン、実用化はいつ?

 

 

~開発の現在地とこれまでの道のり~

毎年冬になると猛威を振るう「ノロウイルス」。

突然の嘔吐や下痢に苦しむお子さんを見るのはつらいですし、看病するご家族への感染リスクも高く、本当に厄介な病気です。「インフルエンザやコロナのように、ワクチンはないのですか?」という質問をいただくこともよくあります。

現時点では、残念ながら世界中で認可されたノロウイルスワクチンはまだありません。

しかし、科学者たちは長年このウイルスと戦い続けており、実用化に向けた努力は着実に進んでいます。今回は、なぜ開発が難しいのか、そして今どの段階にあるのかについてお話しします。


 

なぜ今までワクチンがなかったの?(開発の歴史と壁)

 

ノロウイルスが発見されてから50年以上が経ちますが、ワクチン開発は非常に困難な道のりでした。そこには大きく2つの「高い壁」があったからです。

  • 1. ウイルスを増やすのが難しかった

    ワクチンを作るには、まず研究室でウイルスを培養(増やすこと)する必要があります。しかし、ノロウイルスは人間の腸内でしか増殖しない特殊な性質を持っており、試験管やシャーレの中で増やす技術が長年確立できませんでした。 これが研究を大きく遅らせた最大の原因です。

    (※近年、iPS細胞などの技術応用により、ようやく実験室レベルでの培養が可能になりつつあります。)

  • 2. 型の種類が多く、変異しやすい

    インフルエンザと同じように、ノロウイルスには遺伝子のタイプ(型)がたくさんあります。しかも数年おきに流行する型が変化したり、変異したりするため、「一つの型に効くワクチン」を作っても、流行の変化に追いつけないという難しさがあります。


 

ワクチン開発の「今」はどうなっている?

 

現在、いくつかの製薬会社や研究機関が最終段階に近い臨床試験(治験)を行っています。最新の技術を使ったアプローチが進んでいます。

【現在主流の開発タイプ】

  • VLP(ウイルス様粒子)ワクチン

    ウイルスの「中身(遺伝子)」を抜いた、「外側の殻」だけの粒子を使う方法です。中身がないので病気を引き起こすことはありませんが、体は「敵が来た!」と認識して免疫を作ります。もっとも開発が進んでいるタイプです。

  • mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン

    新型コロナウイルスのワクチンで有名になった技術です。ウイルスのタンパク質の設計図を体に入れ、免疫をつけさせます。開発スピードが速く、複数の型に対応しやすいというメリットがあり、現在注目されています。


 

結局、いつ私たちに届くの?

 

「あと数年」という期待と、「まだ課題がある」という現実が混在しているのが正直なところです。

  • 大人(特に高齢者)向けが先行する可能性

    現在行われている治験の多くは、重症化しやすい高齢者や成人を対象としたものが進んでいます。

  • 子ども向けは慎重に

    小児科医として一番気になるところですが、乳幼児を対象とした治験では、期待通りの効果が出ずに開発が一時中断されたケースも最近報告されました。子どもは大人と免疫の反応が違うため、もう少し時間がかかるかもしれません。


 

ワクチンができるその日まで

 

「夢のワクチン」の背中は見えてきていますが、私たちが手にするまでには、もう少し時間がかかりそうです。

現時点での最強の防御策は、やはり**「手洗い」「次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)による消毒」**です。アルコール消毒が効きにくいノロウイルスには、物理的にウイルスを洗い流すことと、適切な処理が最も効果的です。

ワクチンが登場するその日まで、そして登場してからも、基本の予防策でこの冬も一緒に乗り切っていきましょう。

 

 


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