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じんましん 20251208
蕁麻疹(じんましん)は、皮膚の一部が突然赤くくっきりと盛り上がり(膨疹)、しばらくすると跡形もなく消える皮膚疾患です。
1. 急性・慢性
まず、蕁麻疹は症状が続いている期間によって大きく2つに分類されます。
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急性蕁麻疹
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発症してから**1ヶ月以内(または6週間以内)**に治まるもの。
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風邪などの感染症や、特定の食事、薬剤などが原因であることが比較的多いですが、原因が特定できないこともあります。
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慢性蕁麻疹
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症状が**1ヶ月以上(または6週間以上)**続いているもの。
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夕方から夜にかけて出やすい傾向があり、特定の原因が見つからない(特発性)ケースが大多数を占めます。
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2. 原因・誘因による分類
蕁麻疹は、そのきっかけやメカニズムによって以下のように分類されます。大きく分けると「原因が特定できないもの」と「特定の刺激で起こるもの」になります。
(1) 特発性蕁麻疹(とくはつせい)
毎日のように繰り返し症状が出るものの、特定の検査を行っても原因がはっきりしないタイプです。
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特徴: 慢性蕁麻疹の約70%以上がこれに該当します。
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原因: 疲労、ストレス、感染症などの要因が複雑に絡み合い、体内のマスト細胞(肥満細胞)が活性化しやすくなっている状態と考えられています。
(2) 刺激誘発型蕁麻疹(特定の原因があるもの)
特定の刺激や状況が引き金となって現れるタイプです。さらに細かく分かれます。
アレルギー性蕁麻疹
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原因: 食べ物(そば、卵、甲殻類など)、薬剤(抗生物質、解熱鎮痛剤など)、植物、昆虫毒など。
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特徴: 原因物質を摂取・接触してから数分〜数時間以内に発症します。IgE抗体が関与しています。
非アレルギー性蕁麻疹(仮性アレルゲン)
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原因: ヒスタミンを多く含む食品(サバなどの青魚、タケノコ、ホウレンソウなど)や、造影剤など。
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特徴: アレルギー反応(IgE介在)ではありませんが、化学物質が直接マスト細胞を刺激して起こります。
コリン性蕁麻疹
Getty Images
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原因: 入浴、運動、精神的緊張、辛いものを食べた時など、**「発汗」**や体温上昇がきっかけとなります。
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特徴:
通常の蕁麻疹よりも小さく(数mm程度)、小豆大の膨疹が現れます。かゆみだけでなく、ピリピリとした痛みを伴うことが多いのが特徴です。若年層に多く見られます。
物理性蕁麻疹
物理的な刺激が加わった場所にのみ現れるタイプです。
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機械性蕁麻疹: 下着のゴムの締め付け、時計のベルト、皮膚を掻いた跡などがミミズ腫れになる(皮膚描記症)。
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寒冷蕁麻疹: 冷たい水や風に当たった後、皮膚が温まる時に出る。
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温熱蕁麻疹: 温水や温風などの熱刺激で出る。
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日光蕁麻疹: 日光に当たった部分に出る。
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圧迫蕁麻疹: お尻や足の裏など、長時間体重や重みがかかった部分に、数時間経ってから深く腫れるように出る。
3. その他の特殊な蕁麻疹
血管性浮腫(クインケ浮腫)
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特徴: 皮膚の表面だけでなく、深い部分(皮下組織)でむくみが起こります。まぶたや唇が大きく腫れ上がることが特徴です。
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注意点: 喉の粘膜が腫れると呼吸困難になる危険性があります。遺伝性のもの(HAE)や、薬剤(降圧薬など)が原因の場合もあります。
蕁麻疹様血管炎
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特徴: 見た目は普通の蕁麻疹に似ていますが、個々の皮疹が24時間以上消えず、消えた後に色素沈着(茶色いシミ)を残すのが特徴です。
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背景: 全身性の病気(膠原病など)の一部として現れることがあります。
まとめ
蕁麻疹の多く(特に慢性化したもの)は、「アレルギー検査」をしても原因が特定できない「特発性」であることが一般的です。
もし特定の状況(汗をかいた時、特定の食べ物を食べた時など)でのみ症状が出る場合は、そのエピソードが診断の最も重要な手がかりとなります。
