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乳幼児の頭部打撲 20251209
乳幼児の頭部打撲は、日常的によく起こる事故ですが、言葉で症状を訴えられない分、周囲の大人が慎重に観察する必要があります。
1. 直ちに救急車(119番)を呼ぶべき「危険な兆候」
頭を打った直後、またはしばらくしてから以下の症状が見られる場合は、重篤な頭蓋内出血や脳損傷の可能性があります。迷わず救急車を呼んでください。
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意識がない、呼びかけに反応しない(ぐったりしている)。
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けいれん(ひきつけ)を起こした。
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出血がひどく止まらない。
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鼻や耳から透明な液体(髄液)や血が出ている。
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顔色が極端に悪い(蒼白)、呼吸がおかしい。
2. 急いで医療機関を受診すべきサイン
救急車を呼ぶほど意識障害がなくても、以下の症状がある場合は、脳震盪(のうしんとう)や骨折の疑いがあるため、速やかに脳神経外科や小児科を受診してください。夜間でも救急外来への相談を推奨します。
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繰り返し嘔吐する(1回だけでなく、何度も吐く)。
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機嫌が極端に悪く、泣き止まない。
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視線が合わない、ぼーっとしている。
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手足の動きがおかしい、歩き方がふらつく。
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頭のへこみがある、または「ぶよぶよ」とした柔らかい腫れがある(骨折や頭皮下血腫の疑い)。
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3ヶ月未満の乳児である(骨が柔らかくリスクが高いため、症状が軽くても受診が原則です)。
3. 自宅で様子を見てもよいケース(経過観察)
以下の条件がすべて揃っている場合は、ひとまず自宅で安静にして様子を見ることができます。
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打った直後に「ウァーン」と大声で泣いた。
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泣いた後はケロッとしていて、機嫌よく遊んでいる。
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顔色が良く、食欲(ミルクや母乳の飲み)も普段通りである。
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患部に硬い「たんこぶ」ができているが、それ以外の症状はない。
自宅での対処法(ホームケア)
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冷却: 患部(たんこぶ)をタオルで包んだ保冷剤などで冷やします。嫌がる場合は無理強いせず、濡れタオル程度でも構いません。強く押さえないように注意してください。
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安静: 打撲後1〜2時間は、激しい運動を避け、静かに過ごさせてください。興奮させないことが大切です。
4. 経過観察の期間とポイント
頭部打撲の症状は、遅れて現れることがあります(遅発性の頭蓋内出血など)。
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最初の6時間: 最も注意が必要な時間帯です。急変がないか、目を離さないようにしてください。
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24時間以内: ここまでは「急変の可能性がある」と考えて慎重に過ごします。小児の場合、ほとんどが24時間以内に症状が出るとされています。つまり、24時間経過していつも通り元気に活動していれば、中枢神経への影響はほぼないといえます。
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48時間(2日間): まれに数日経ってから血腫が大きくなることがあります。丸2日間、普段と変わった様子がなければ、ひとまずは安心と言えます。
生活上の注意点(受傷当日)
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入浴: 当日は湯船に浸かるのは避け、短時間のシャワー程度にしてください(体が温まると血流が良くなり、出血や腫れを助長する恐れがあるため)。
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睡眠: 寝かせても構いませんが、**「本当に寝ているだけか、意識が薄れているのか」**を確認する必要があります。最初の数時間は、時々軽く揺すったり声をかけたりして、反応がある(モゾモゾ動く、目を開けるなど)ことを確認してください。
