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インフルエンザの登園許可証 いまだに・・・    20251211

インフルエンザや新型コロナの流行期において、医学的な必要性がないにもかかわらず「紙」のためだけに受診を強いられる現状は、患者様にとっても医療機関にとっても大きな負担であり、感染拡大のリスクを高める要因にもなりかねません。


1. 治癒証明書・登校許可証が「不要」とされるようになった経緯

この流れが決定的になったのは、過去の2つのパンデミックがきっかけです。

① 2009年 新型インフルエンザ(H1N1)の教訓

最大の転換点は2009年の新型インフルエンザ流行時です。

  • 流行時期に多くの患者が治癒証明書を求めて医療機関に殺到し、外来機能が麻痺寸前になりました。

  • 文部科学省(文科省)は「医療機関の負担軽減」と「待合室での二次感染防止」のため、「治癒証明書を求めないこと」という通知を各都道府県教育委員会に出しました。

  • これを機に、公立の小中高校では医師による証明書ではなく、保護者が記入する「インフルエンザ経過報告書(登校届)」等の運用に切り替える自治体が急増しました。

② 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)での徹底

  • 厚生労働省の見解: 厚労省は企業や学校に対し、陰性証明や治癒証明を従業員や生徒に求めないよう繰り返し周知しました(「新型コロナウイルス感染症に関するQ&A」等)。

  • 保健所や医療機関の逼迫を防ぐため、および「PCR検査等のリソースを重症化リスクのある人に集中させるため」です。この際、インフルエンザについても同様の扱い(証明書不要)とする方針が再確認されました。


2. なぜ私立校や保育園ではまだ求められるのか?

公立学校ではかなり「保護者記入の届出」が浸透しましたが、以下の理由で徹底されていません。

  1. 管轄の違い(学校 vs 保育園):

    • 学校(文科省): 学校保健安全法に基づき、比較的統一した運用(出席停止期間の明確な基準)がとりやすい。

    • 保育園(厚労省): 「保育所における感染症対策ガイドライン」が存在します。実はこのガイドライン(2018年改訂版)において、インフルエンザは「医師が記入する意見書」が望ましいと記載されている箇所があり、これを根拠に園側が求めてくるケースがあります。(※ただし、地域流行時などは柔軟な対応も認められています)

  2. 私立独自のルール: 私立学校や私立幼稚園は、独自の感染症対策ポリシーを持っている場合があり、行政の通知に対する拘束力が公立ほど強くありません。

  3. 園・学校側の責任回避: 「医師が大丈夫と言った」という担保が欲しいため、慣例的に求め続けています。


3. 無駄な受診・証明書要求をなくすために

クリニック単独で戦うのは大変ですので、いくつか手段を考えました。
 

【手段1】 エビデンスを用いた患者(保護者)への啓発

保護者から学校・園へ「病院で断られた(不要と言われた)」と言ってもらう。

  • 院内掲示・HPでの告知:

    「当院では、インフルエンザおよび新型コロナウイルス感染症の治癒証明書(登園・登校許可証)の発行は、医学的な治療行為ではないため原則行っておりません。また、回復期の再受診は院内感染のリスクを高めます。厚生労働省および文部科学省の指針に基づき、『発症日と解熱日を記録した経過報告書』の提出を推奨しています。」

  • 「厚生労働省の通知」のコピーを渡す:

    企業や学校が証明書を求めてきた際に、患者さんが提示できる「厚労省のQ&A(証明書請求は控えるべきという内容)」のプリントを用意しておき、それを学校に提出させるようにします。

【手段2】 「文書料」の明示による抑制(実利的な抑止)

  • 文書料の設定: 「治癒証明書の発行は自費診療となり、文書料として◯◯円(例:3,000円〜5,000円など高めに設定)かかります」と学校側に伝える。そうすることによって、 保護者が「そんなにかかるなら、学校(園)に『先生が有料だと言っている、本当に必要なのか』と問い合わせる」ようになる。その結果、園側が「では連絡帳の記載で結構です」と折れる・・・と想定。
     

【手段3】 地域医師会を通じた「統一フォーマット」の導入

  • 医師会への働きかけ: 地域の小児科医会や医師会で議題に挙げ、「インフルエンザ治癒証明書の全廃」または「保護者記入式の登園届への統一」を地域の保育課・教育委員会と協定を結ぶ。

  • 成功例: 多くの自治体(例:千葉市、川崎市など)では、医師会と行政が話し合い、インフルエンザに関しては**「医師の診断(最初の受診)+保護者の記入(解熱の確認)」**で登園可能とする統一書式を作成・運用しています。

    しかし、実際には受診回数が減るため経営的な理由でそれを反対する医者も存在するので難しいかもしれません

     

*インフルエンザ・新型コロナウイルスに関しては、当院では治癒証明書・登園登校許可を発行しない方針でいきたいと思います


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