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高精度の遺伝子検査機器「Spotfire」を導入しました 20251212
当院では、より正確で迅速な診断を行うため、最新の呼吸器感染症遺伝子検査機器「Spotfire(スポットファイア)」を今年8月に導入いたしました。
約5か月間使ってみて、特にマイコプラズマの診断精度がかなり向上したのでご報告したいと思います。マイコプラズマは通常、10人中9人は感冒症状のみで自然に治ります。そのため普通の風邪として大多数を見逃されている病原体です。
「咳が長引く」を主訴に来院した患者様にSpotFire検査を行うと、かなりの頻度でマイコプラズマが検出されます。さらに、今年は百日咳の流行シーズンでもあったため、百日咳の診断にも非常に貢献してくれました。
これまでの検査では診断が難しかった病原体も、高い精度で、しかも短時間で特定することが可能になります。今回は、この新しい検査機器について詳しくご説明します。
■Spotfire(スポットファイア)とは? 鼻の奥から採取した検体を使って、ウイルスや細菌の遺伝子を検出する「PCR検査」の一種です。 従来の迅速抗原検査(インフルエンザ検査などで一般的)に比べて感度(検出する能力)が非常に高く、一度の検査で複数のウイルスや細菌を同時に調べることができます。
■特にこのような時に力を発揮します 特に、これまで診断が難しかった以下の感染症において、非常に役立っています。
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マイコプラズマ肺炎 従来の抗原検査では反応が出にくいことがありましたが、Spotfireなら発症初期でも高い精度で検出可能です。
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百日咳(ひゃくにちぜき) 激しい咳が特徴ですが、診断には時間がかかることが一般的でした。これを迅速に診断することで、周囲への感染拡大を防ぐことができます。
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原因不明の高熱 「インフルエンザもコロナも陰性だけど、熱が下がらない」といった場合、ヒトメタニューロウイルスやRSウイルスなど、他の原因を特定できる可能性が高まります。
■患者様・保護者様へのメリット
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適切な治療薬を選べます 「細菌性」か「ウイルス性」かがはっきり分かるため、抗生物質が効くのか、それとも必要ないのかを的確に判断できます。不要な薬を飲ませる心配が減ります。
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結果が出るまで約20分 検査結果はその日の診察内でお伝えできます。原因がわからないまま帰宅し、不安な夜を過ごすことが少なくなります。
■検査の対象となる方 この検査は、通常の風邪症状すべてに行うものではありません。 医師の診察の結果、**「画像検査で肺炎が疑われる場合」や「医学的に原因検索が強く必要とされる場合」**など、一定の基準を満たした患者様に行います(保険適用のルールがあります)。 ※通常の風邪症状の場合は、これまで通りの診察・検査となります。
「長引く咳が心配」「熱の原因がわからなくて不安」という場合は、診察時にご相談ください。
