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読字障害・書字障害    20251213

小学生の学習障害(限局性学習症:SLD)の中でも、特に「読むこと」「書くこと」に困難を抱える読字障害(ディスレクシア)と書字障害(ディスグラフィア)について解説します。

これらは知的な遅れや、本人の努力不足、家庭のしつけが原因ではなく、脳の機能的な特性によるものです。


1. 読字障害・書字障害とは

学習障害(LD)の中核的な症状です。

**読字障害(ディスレクシア)**は、文字を音声に変換すること(解読)や、文章の意味を理解することに困難があります。

**書字障害(ディスグラフィア)**は、文字の形を想起して書くことや、文章を構成して書くことに困難があります。

※両者は併発することが非常に多いのが特徴です(読むのが苦手なため、書くことも苦手になるケースなど)。

2. 小学校低学年で見られやすい「初期症状」

入学後、本格的な学習が始まると以下のようなサインが現れます。

読むことに関するサイン

  • 逐次読み: 「り、ん、ご」のように一文字ずつ区切って拾うように読む。

  • 勝手読み: 文末などを予測して、書いてあることと違う言葉で読む(「行きました」を「行った」など)。

  • 行の飛ばし: 読んでいる最中に行を飛ばしたり、同じ行を読んだりする。指でなぞらないと読めない。

  • 類似文字の混同: 「わ」と「ね」、「ぬ」と「め」、「さ」と「ち」などの形が似ている文字を読み間違える。

  • 特殊音節のつまずき: 拗音(きゃ、きゅ、きょ)や促音(っ)、長音(ー)が正しく読めない。

書くことに関するサイン

  • 鏡文字: 2年生以降になっても鏡文字(左右反転した文字)が頻発する。

  • 枠からはみ出す: マス目の中に文字を収めることが極端に苦手。

  • 筆圧の異常: 鉛筆の芯がすぐ折れるほど強い、あるいは極端に薄い。

  • 書き写しの遅さ: 黒板の文字をノートに写すのに、周囲の子の倍以上の時間がかかる。

  • 極度の疲労: 宿題の漢字練習などで、頭痛や腹痛を訴えるほど消耗する。

3. 主な「特徴」とメカニズム

なぜ読み書きが難しいのか、その背景には以下の特徴があります。

音韻処理の不全(音の認識の弱さ)

文字(視覚情報)を音(聴覚情報)に変換する脳の働きの弱さです。「りんご」という単語が「り・ん・ご」という3つの音の塊であることを認識するのが苦手です。これが読字障害の主な要因となります。

視覚認知機能の弱さ(形の認識の弱さ)

文字を「図形」として捉える力の偏りです。複雑な漢字が「線と点の無意味な集合体」に見えたり、文字が歪んで見えたりすることがあります。これは書字障害に強く影響します。

自動化の困難

通常、練習を繰り返すと読み書きは無意識(自動的)にできるようになりますが、このタイプの子どもたちは、毎回必死に「思い出して」処理を行う必要があります。そのため、処理速度が遅くなり、内容の理解まで頭のリソースが回りません。

4. 原因

医学的には、脳の特定の領域(左脳の言語野や視覚処理に関わる領域など)の発達や機能の偏りが原因とされています。

  • 遺伝的要因: 親族に似たような傾向がある場合、遺伝的な要素が関与している可能性があります。

  • 環境要因: 生まれつきの脳機能の特性であり、親の育て方や本人の「やる気」の問題ではありません。

5. 治療法・支援の方向性

現代の医学では、脳の機能を「治す(完治させる)」薬や手術はありません。そのため、**「訓練(療育)」「環境調整(合理的配慮)」**の2本柱で対応します。

環境調整(合理的配慮)の例

  • ICTの活用: タブレットの読み上げ機能を使う、書く代わりにキーボード入力や音声入力を使う。

  • 試験の配慮: 時間延長、問題文の拡大、ルビ振り、代読・代筆など。

  • ツールの変更: マス目がわかりやすいノート、書きやすい鉛筆やペンの使用許可。

6. 具体的な訓練方法

家庭や学校、療育機関で行える具体的なアプローチです。

読む力を育てる訓練

  • モーラ分解(手拍子): 「あ・り・が・と・う」と一音ずつ手を叩きながら発声し、音の粒を意識させる。

  • スリット読み: 厚紙に一行分だけ窓を開けた道具を使い、余計な情報を隠して今読むべき場所に集中させる。

  • ハイライト法: 読む部分を蛍光ペンでなぞりながら読む。

  • 読み聞かせとの並行: 親が読み聞かせをし、子供は文字を目で追う(オーディオブックを聞きながら本を見るのも有効)。

書く力を育てる(負担を減らす)訓練

  • 多感覚アプローチ: 鉛筆だけでなく、指で空中に大きく書く、粘土で作る、ザラザラした素材の上に指で書くなど、触覚や身体感覚を使って形を覚える。

  • 唱え書き: 「横、止まって、下にはらって」など、書き順をリズムや言葉にして唱えながら書く。

  • パーツ分解: 漢字を「へん」と「つくり」などのパーツに分解し、プラモデルのように組み立てる感覚で教える(例:「木」と「公」で「松」)。

  • なぞり書きの重視: 白紙に書く練習よりも、薄く書かれた文字をなぞる練習を優先し、正しい形を手に覚え込ませる。


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重要なのは、「読み書きの困難=知能の低さ」ではないということです。無理な反復練習(漢字の書き取り100回など)は、子どもに「自分はダメだ」という無力感(二次障害)を植え付けるだけで、逆効果になることが多いです。

「努力させる」のではなく、「その子に合った学び方のルート(眼鏡をかけるようにタブレットを使うなど)」を見つけることが最大の治療となります。

 

〇専門の医療機関

読字障害・書字障害(LD/SLD)の診断は非常に専門性が高く、一般的な小児科や精神科では「詳しい検査(読み書きの特異性を見る検査)」ができない場合があります。以下の医療機関は、発達の専門外来や学習障害への対応実績がある場所です。

※受診には基本的に**「紹介状」「事前の予約」**が必要です。また、専門外来はどこも混雑しており、初診まで数ヶ月待つことが一般的であることをご留意ください。

1. 千葉県内の医療機関(通いやすい場所)

八千代市からアクセスが良く、地域の中核となる機関です。

■ 東京女子医科大学八千代医療センター(八千代市)

  • 診療科: 小児科(神経小児科・発達専門外来)

  • 特徴: 神経小児科」では発達の遅れや学習の困難さを含めた診療を行っています。まずはかかりつけの小児科で相談し、紹介状を書いてもらうのが最短ルートです。身体的な異常がないかの確認も含めて診断を受けられます。

■ 千葉大学医学部附属病院(千葉市中央区)

  • 診療科: こどものこころ診療部

  • 特徴: 千葉県における発達障害診療の拠点の一つです。「限局性学習症(学習障害)」を含む神経発達症の診断・治療を行っており、大学病院ならではの詳しい心理検査(WISCなど)や医学的な評価が可能です。

  • 注意: 非常に混み合っており、紹介状が必要です。

■ 千葉県こども病院(千葉市緑区)

  • 診療科: 精神科(こころの診療科)

  • 特徴: 小児専門の高度医療機関です。ホームページ等の案内にも「読み書きに関する検査」が可能である旨の記載があり、専門的な知能検査や発達検査を通じて、学習のつまづきの背景を詳しく調べてくれます。

■ むさしの北総クリニック(松戸市・東松戸駅)

  • 診療科: 児童精神科・小児科

  • 特徴: クリニック規模ですが、言語聴覚士(ST)が在籍しており、対象疾患に「読み書きに心配のある小学生」を挙げています。大学病院よりも比較的敷居が低く、リハビリ(療育)的な視点での相談がしやすい可能性があります。


2. 東京都内の医療機関(高度な専門性)

距離はありますが、学習障害(LD)に特化した専門外来を持っています。

■ 国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)

  • 診療科: こころの診療部「LD外来(学びの診療部)」

  • 特徴: 日本国内でも数少ない、学習障害(LD)に特化した専門外来があります。ディスレクシアの診断や指導方針の策定においてトップクラスの専門性を持ちます。

  • 注意: 非常に人気があり、予約が取りにくいことで知られています。まずは電話で予約状況を確認することをお勧めします。


3. 受診までのスムーズな流れ

病院に行けばすぐに「訓練」が始まるわけではありません。医療機関の主な役割は**「医学的な診断(他の病気の除外含む)」「特性の評価(検査)」**です。日々の訓練は学校や別の療育機関が担うことが多いため、以下の手順で進めるのが一般的です。

  1. 学校への相談(重要)

    担任の先生やスクールカウンセラーに相談し、学校での様子(板書が間に合わない、音読が苦手など)をまとめておきます。これが医師への重要な情報になります。

  2. 紹介状の準備

    かかりつけ小児科か、学校医に相談して、上記の専門病院への「診療情報提供書(紹介状)」を書いてもらいます。

  3. 予約・待機

    病院に電話し予約を取ります。待機期間中に、学校で「通級指導教室(ことばの教室など)」の利用ができないか相談を進めておくと時間を無駄にしません。

 


なないろこどもクリニックのアクセスマップ

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    緑が丘駅経由八千代台駅行き「京成バラ園」バス停下車
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