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繰り返す溶連菌感染症    20251220

最新のガイドライン(日本小児科学会、米国感染症学会IDSA等)および近年の臨床トレンドに基づき溶連菌感染症の治療方針について検証してみました。

1. 繰り返す溶連菌感染症の治療方針と管理

短期間に反復する場合、まずは「真の再感染」か「保菌者(キャリア)のウイルス性咽頭炎」かの鑑別が重要です。多くの「反復例」は、実際には保菌者がアデノウイルスやライノウイルス等の風邪をひいているケースとされています。

【治療が必要な「反復感染」と判断された場合の薬剤選択】

ペニシリン系やセフェム系で改善・除菌しきれない場合、口腔内の常在菌(ブドウ球菌やインフルエンザ菌など)がβ-ラクタマーゼを産生し、ペニシリンを分解して溶連菌を守っている可能性(コ・パソジェン説)や、細胞内への菌の逃避が考えられます。以下の順で薬剤変更を検討します。

  • アモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチン等): β-ラクタマーゼ阻害薬を配合しており、耐性菌が共存する環境でも効果を発揮します。

  • クリンダマイシン(ダラシン等): タンパク合成阻害薬であり、細胞内移行性が良好です。毒素産生の抑制効果もあり、除菌率が高いとされます(10日間投与)。

  • リファンピシンの併用: アモキシシリン等の標準治療の最後の4日間にリファンピシン(10mg/kg/回、1日2回、最大300mg/回)を併用する方法です。保菌状態の除菌に極めて有効とされ、IDSAガイドラインでも言及されている手法です。

【常在菌化(保菌者)の除菌適応】

原則として、無症状の保菌者に対する除菌は推奨されません。ただし、以下の例外的な状況では除菌(eradication)が試みられます。

  • 家族内で「ピンポン感染」が強く疑われ、症状の連鎖が止まらない場合。

  • リウマチ熱や糸球体腎炎の既往が本人または家族にある場合。

  • 地域や学校で猩紅熱や劇症型レンサ球菌感染症が流行している場合。

  • 家族が医療従事者等で、職業上の理由から除菌が強く望まれる場合。

2. 兄弟(家族)への予防内服・一斉治療について

【現状の推奨】

  • 一律の予防内服は推奨されない: 以前のように「兄弟も一緒に飲む」というルーチンな予防投与は推奨されなくなっています。

  • 有症状時のみ検査・治療: 濃厚接触者であっても、発熱や咽頭痛などの症状がない限り、検査や治療は不要とされています。

  • 例外(ピンポン感染時): 家族内で何度も感染が循環している(ピンポン感染)と判断される場合に限り、家族全員(無症状者含む)の同時検査を行い、陽性者全員を一斉に治療することでリセットを図る方法は現在も選択肢の一つです。

3. 治療後の尿検査(検尿)について

【現状のトレンドとエビデンス】

  • ルーチンの尿検査は「必須ではない」とする見解が主流: 以前は「治療終了2〜3週間後に必ず尿検査」が行われていましたが、近年は以下の理由から「無症状の全例に行う必要はない」という方針にシフトしています。

    • 尿検査を行っても、溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSAGN)の発症自体を予防できるわけではない。

    • PSAGNの多くは予後良好であり、早期発見が必ずしも予後改善に直結しない。

    • 日本小児科学会雑誌等の報告でも、全例検査の有用性に疑問が呈されています。

  • 症状観察への切り替え: 検査を行う代わりに、保護者に対して「肉眼的血尿(コーラ色の尿)」や「浮腫(まぶたの腫れ)」、「乏尿」といったPSAGNのサインを具体的に説明し、症状が出た場合に速やかに受診させる指導が推奨されています。

  • 実地臨床での対応: ただし、患者・家族の安心感や、見逃しリスクの回避(訴訟対策等含む)の観点から、現在も慣習として実施している施設は多く、完全に廃止されているわけではありません。

    当院の方針としては、尿検査は必須ではなく症状があれば検査のために受診をすすめています。


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