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機能性ディスペプシア(FD)と過敏性腸症候群(IBS)のオーバーラップ     20251224

「上腹部の不快感(FD)」と「下腹部の便通異常・腹痛(IBS)」が混在し、かつ治療に難渋するケースは、実臨床では非常に頻繁に遭遇します。

オーバーラップ症例は単独の疾患よりも症状が重く、QOL(生活の質)の低下が著しい傾向にあるため、包括的な理解とアプローチが重要です。


1. 症状の特徴

FD(胃)とIBS(腸)の症状が併存します。小児や思春期では、成人のように「胃が痛い」「腸が痛い」と明確に区別できず、**「おへその周りがなんとなく気持ち悪い、痛い」**という曖昧な訴えになりがちです。

  • FD症状: 食後の胃もたれ、早期満腹感、心窩部痛、心窩部灼熱感。

  • IBS症状: 腹痛(排便で軽快することが多い)、下痢、便秘、またはその交代。

  • 全身症状(重要):

    オーバーラップ症例では、消化器症状以外に頭痛、不眠、倦怠感、不安感などの不定愁訴を伴う頻度が、単独疾患群よりも有意に高いことが知られています。

2. 疫学(頻度)

FDとIBSの合併率は非常に高く、これらは「別の病気がたまたま2つある」というよりは、**「同じ病態(機能性消化管障害)が、胃と腸の両方に現れている」**と捉えるのが自然です。

  • FD患者におけるIBS合併率: 約30〜50%

  • IBS患者におけるFD合併率: 約30〜60%

  • 小児・思春期: 小児の機能性腹痛疾患(FAPDs)においては、症状が移行したり、混在したりすることが成人以上に一般的です。

3. 成因(病態生理)

なぜ両者が合併するのかについては、共通の病態生理が存在するためと考えられています。

  • 内臓知覚過敏(Visceral Hypersensitivity):

    胃も腸も、わずかな刺激(ガスや食物の通過)を「痛み」として過剰に感じ取る閾値の低下が起きています。

  • 脳腸相関の破綻(Brain-Gut Interaction):

    ストレス $ ightarrow$ 脳からのCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)分泌 $ ightarrow$ 消化管運動の異常・知覚過敏の増悪、という悪循環です。今回の患者さんのように「登校への恐怖」がある場合、このルートが強く活性化しています。

  • 感染後(Post-infectious):

    ウイルス性胃腸炎などの感染後、微細な炎症が持続し、胃と腸の両方の機能異常を引き起こすことがあります。

  • 消化管運動機能異常:

    「胃の排出能遅延(もたれ)」と「結腸の通過異常(下痢・便秘)」が同時に起こっています。

4. 治療法

オーバーラップ症例は、単独の薬剤(例えばIBS薬のみ)では症状を取りきれないことが多く、**「多角的なアプローチ」**が必要です。

A. 薬物療法

単一の臓器ではなく、全体をカバーできる薬剤、または組み合わせが推奨されます。

  1. 消化管運動機能改善薬(アコファチド、モサプリドなど):

    • 主にFD治療薬ですが、胃結腸反射を整えることでIBS(特に便秘型)にも好影響を与えることがあります。

  2. 漢方薬(非常に有効):

    • 心身一如の観点から、複数の症状を一網打尽にできる可能性があります。

    • 六君子湯: FDの第一選択ですが、ストレスによる食欲不振や心窩部のつかえに有効です。

    • 半夏瀉心湯: **「心下痞硬(みぞおちのつかえ)」と「下痢・腹鳴」**がある場合に最適です。FD+IBS(下痢型)のオーバーラップには第一選択肢の一つとなります。

    • 桂枝加芍薬湯: 腹痛と腹部膨満感が強い場合。

  3. 少量抗うつ薬(TCA/SSRI/SNRI):

    • 消化管アプローチが無効の場合、中枢性の疼痛抑制(痛みの閾値を上げる)目的で使用します。抗不安作用も兼ねるため、不登校を伴うようなケースでは有効な選択肢です。

B. 非薬物療法

  • 食事指導: 低FODMAP食(IBSには有効だが、FDへの効果は限定的との意見もあり)、規則正しい食生活。

  • 心理療法: 認知行動療法、催眠療法など。病気への囚われを減らすアプローチ。

5. 予後

  • 生命予後: 良好です。器質的な疾患に移行することは稀です。

  • 機能予後: 慢性に経過し、症状の増悪・寛解を繰り返しやすいです。

  • 特徴: 単独疾患(FDのみ、IBSのみ)の患者と比較して、オーバーラップ症例は症状が重篤で、医療機関への受診頻度が高く、QOLが低い傾向にあります。

 


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