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甲殻類(エビ・カニ)アレルギー 20260116
小児の甲殻類(エビ・カニ)アレルギーは、学童期以降に増加し、一度発症すると耐性獲得(治ること)が難しいとされる重要な食物アレルギーの一つです。
1. 甲殻類アレルギーの特徴
甲殻類アレルギーは、乳幼児期よりも学童期から成人にかけて発症頻度が高まるのが特徴です。
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原因食物: 主にエビ(クルマエビ、サクラエビなど)とカニ(タラバガニ、ズワイガニなど)です。
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症状の強さ: 重症化しやすく、アナフィラキシーを引き起こす割合が高い傾向にあります。
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熱安定性: 原因となるタンパク質は熱に強く、加熱調理してもアレルゲン性は低下しません。そのため、「生はダメだが加熱すれば大丈夫」というケースは稀です。
2. 主要な抗原と交差反応性
甲殻類アレルギーを理解する上で、トロポミオシンというタンパク質が鍵となります。
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トロポミオシン: 筋肉の収縮に関わるタンパク質で、エビやカニの主要アレルゲンです。
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交差反応: エビとカニのトロポミオシンは構造が似ているため、エビにアレルギーがある子の多くはカニにも反応します。
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広範な交差性: 軟体類(イカ、タコ)、貝類(アサリ、ホタテ)、さらにはダニやゴキブリのトロポミオシンとも構造が似ているため、これらに感作されていることで検査値(IgE抗体)が陽性に出る場合があります。
3. 症状
摂取後数分から1時間以内に現れる「即時型症状」が中心です。
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皮膚症状: じんましん、赤み、痒み(最も多い)。
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粘膜症状: 目の充血・腫れ、口の中の違和感やイガイガ感。
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呼吸器症状: 咳、ゼーゼーする(喘鳴)、呼吸困難。
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消化器症状: 腹痛、嘔吐、下痢。
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食物依存性運動誘発アナフィラキシー: 甲殻類を食べた後に運動することで重篤な症状が出る病態も、中高生以降で注意が必要です。
4. 診断と検査
診断は、問診(いつ、何を、どれくらい食べて、どうなったか)が最も重要です。
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血液検査(特異的IgE抗体): 目安にはなりますが、数値が高いからといって必ずしも症状が出るとは限りません。特にダニ感作がある場合、数値が高く出やすい(偽陽性)傾向があります。
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皮膚プリックテスト: 血液検査よりも診断価値が高い場合があります。
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食物経口負荷試験(OFC): 確定診断や、どれくらいなら食べられるか(閾値)を確認するための最も確実な方法です。
5. 管理と治療
基本は「必要最小限の除去」です。
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除去の範囲: エビ・カニの両方を除去すべきか、片方で良いかは個々の状況によります。
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誤食への備え: 重症リスクが高い場合は、アドレナリン自己注射薬(エピペン)の携帯を検討します。
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加工食品の確認: 2023年以降、エビ・カニは食品表示法における特定原材料(表示義務あり)となっています。
6. 予後(治る可能性)
卵や牛乳のアレルギーは就学までに多くが耐性を獲得しますが、甲殻類アレルギーは自然寛解(自然に治ること)が少ないとされています。成人まで持続することが多いため、長期的な視点での管理が必要です。
