なないろこどもクリニック なないろこどもクリニック

コラム

コラム一覧

ヘディングのリスク検証    20260820

サッカーの元プロ選手は、認知症などの神経を患うリスクが一般の方の2~3倍高いことが、過去の大規模な調査で報告されています¹⁾。
その原因として長く疑われてきたのが、頭部への繰り返しの衝撃、つまり「ヘディング」です。
しかし、「実際の試合中のヘディングが、脳にどのような急性の影響を与えているのか」については、これまでよくわかっていませんでした。過去の研究では、実験的に非現実的な回数のボールを当てたり、走る・跳ぶといった運動そのものの影響が考慮されていなかったりという限界があったためです。

今回、オランダの研究チームが、上位アマチュアリーグの男性選手302人(平均24.6歳)を対象に、実際の公式戦11試合でこの疑問を検証しました。
試合前、試合直後(1時間以内)、そして24~48時間後に血液検査を行い、さらにビデオ解析でヘディングの回数や強さを1回ずつ記録するという、これまでにない厳密な方法で行われた研究です²⁾。
結果として、選手の72%が試合中に少なくとも1回のヘディングをしており、平均は1人あたり2.0回でした。
分析の結果、ヘディングをした選手は、しなかった選手に比べて試合直後に「S100B」という、脳組織のダメージを示すタンパク質の血中濃度が約35%高く上昇していました。また、ヘディングの回数が多いほど、S100Bや「p-tau217」(アルツハイマー病などに関連するタンパク質)の上昇が大きくなることもわかりました。
とくに注目したいのは、ボールが20メートル以上飛んできてから当たる「高衝撃のヘディング」の影響です。これを複数回受けた選手では、ヘディングをしなかった選手に比べ、これらのマーカーが約50%も大幅に上昇していました。
こうした血液中のマーカーは、24~48時間後には元のレベルに戻っていました。しかし研究チームは、「血液中の数値が正常化しても、脳の組織が完全に回復したことを意味するわけではない」と注意を促しています。1回1回は小さなダメージであっても、長年繰り返されることで、将来的な病気のプロセスとして積み重なる可能性は否定できないからです。
もちろん、この研究は観察の段階であり、「ヘディングが将来の認知症を必ず引き起こす」と証明したものではありません。また、女性やお子さん、プロ選手に全く同じ結果が当てはまるかどうかは今後の検証が必要です。

私たちが知っておきたいのは、プロではない一般的な競技レベルであっても、「1試合のヘディングが脳に検出可能な変化を起こしうる」という事実です。とくに遠くから飛んでくるボールへのヘディングは影響が大きいため、研究チームは「ヘディングの回数や強い衝撃を減らすルール作りが、脳への負担を減らせる可能性がある」と指摘しています。
実際、海外ではお子さんのヘディングを制限する国も出てきています。サッカーに親しんでいるご本人や、お子さんがプレーされているご家族は、こうした議論が科学的データに基づいて進んでいることを、ぜひ知っておいていただければと思います。
 

参考資料
1)Mackay DF, et al. Neurodegenerative disease mortality among former professional soccer players. N Engl J Med. 2019;381:1801-1808.
2)Hoppen MI, et al. Amateur soccer heading and acute elevations in blood-based p-tau217 and S100B. JAMA Neurol. 2026;83:635-644.


なないろこどもクリニックのアクセスマップ

なないろこどもクリニック

〒276-0046 千葉県八千代市大和田新田458-10
047-459-3311 047-459-3311
  • 東葉高速鉄道「八千代中央駅」から東洋バス乗車、
    緑が丘駅経由八千代台駅行き「京成バラ園」バス停下車
  • 東葉高速鉄道「八千代緑が丘」から東洋バス乗車、
    八千代医療センター行き「京成バラ園」バス停下車
  • 駐車場あり:クリニック敷地内4台、クリニック裏砂利駐車場15台